金沢発最終のサンダーバードに乗ったら…粋な車内アナウンスに涙腺がゆるんだ 北陸新幹線延伸開業に伴い、金沢―敦賀間から姿を消した在来線特急
2月15日午前9時45分ごろ、大阪市内の駅窓口に到着した。既に男性客が1人、そわそわと待っていた。 プッ プッ プッ ポーン。「午前、10時を、お知らせします…」。ッターン…カタカタ…。駅係員が顔をあげ、にやり。 「お客さん。座席取れましたよ」 JRではちょうど1か月前の午前10時に指定席切符の発売が開始される。だから、ラストランや臨時列車など人気の列車については、多くの鉄道ファンらが切符を求め、その時間に駅の窓口に集結する。時報とともに全国の駅係員が機械を操作し、少ない指定席券を争うのだ。これが俗に言う〝10時打ち〟だ。 駅係員の言葉は、筆者とその前にいた男性客が、最終サンダーバードの切符を手に入れた瞬間を意味していた。 ▽「最速の在来線特急が北陸路から消えてしまうのは名残惜しい」 そしていよいよ迎えた、3月15日の午後8時過ぎ。金沢駅はサンダーバードやしらさぎへの乗車や、ラストランを一目見ようと集まった鉄道ファン、新幹線の切符を買い求める乗客らで大混雑していた。
新幹線改札口の前には「新幹線開業まであと1日」と、誇らしげに電光掲示が輝いている。改札口やみどりの窓口の前には「ありがとう北陸本線」、利用者のメッセージもたくさん掲示してあった。行き先表示板に流れる「特急」の文字、北陸線の案内板、全てが明日、変わる。そう思うと、寂しさがこみあげてきた。 とにかく、乗車するためホームへと上がる。入場規制はかかっていたが、セレモニーの開催される先頭車両付近は近づけないほど恐ろしい人混みだった。そこでホームで列車を待つ客と話をしてみることにした。 最初に話を聞いたのは、〝大回り〟乗車が好きだという「乗り鉄」の男子大学生だ。大回りとは、例えば、敦賀から米原まで、通常の北陸本線ルートではなく金沢、東京、名古屋を経由するように、一筆書きできるルートで遠回りに乗車することを指す。彼は「よく北陸本線には乗り、お世話になりました。時速130kmと最速の在来線特急が北陸路から消えてしまうのは名残惜しい」と話した。