俳優生活40年・妹尾和夫「升毅、國村隼と芝居を語り合った日々」
NHK「御堂筋の春」で全国ネットデビュー
そして、妹尾は努力を続け、NHKで制作されるドラマのオーディションで、初めて名前の付いた役で全国ネットに出られるチャンスをつかんだ。そのドラマは1980年に放送された銀河小説「御堂筋の春」。台本にある出演者をみると、三浦洋一、浅野温子、伴淳三郎、火野正平、丘みつ子ら、そうそうたる顔ぶれだ。 妹尾は大阪市大正区の実家にあるパン店の車で、ドラマが撮影されるNHK大阪放送局へと向かった。そして、ウキウキした気持ちでスタジオの控え室へ行くと、すでに同じくオーディションに受かっていた國村もその場にいた。 「ヨネちゃん(國村の本名・米村から呼んでいた愛称)は、議論する時に『どう思う?』って聞いたら、たいてい『へへへっ』って笑ってるタイプでした。けどね、オーディションで最終選考までいくと、たいていヨネちゃんがいたんですよ」と話す妹尾。そんな國村は大切な仲間であり、常にライバル心を燃やしていたとも話した。
國村&古尾谷雅人と森之宮バッティングセンターへ
しかし「御堂筋の春」のロケ現場では、共演者らと仲良く過ごした。野球にかかわるドラマだったため、一緒にバッティングセンターへ行く機会もあった。メンバーは妹尾、國村、そして古尾谷雅人も行動を共にした。 「たしかドラマを撮ってたNHKの近くで、日生球場(日本生命球場)のそばにあった『森之宮バッティングセンター』まで、うちのパン店の車に3人乗って行ったんです。古尾谷さんは背が高くて豪快なスイングで。古尾谷さんとは後に再会するんですけど、このドラマでお会いした時のことは忘れられませんね」と、妹尾は身ぶり手ぶりで様子を語っていた。
浅野温子から「私の兄に似てるんです」と言われ...
別の日には、帰ろうとした時に浅野温子から「乗せていってもらえませんか」と声をかけられ、宿泊先のホテルまで送ったこともあった。その時「妹尾さんは、私の兄に似てるんです」と言われたことは、今でもすごくいい思い出になっている。 そんな思い出のドラマから20年後、妹尾がパーソナリティを務めるラジオ番組にゲスト出演。本番直前に妹尾はスタジオで浅野を見つめ思い出話を期待した。 しかし「本番前に話そうと思って顔を見つめたら『なにかついてますか?』って笑顔で言われて。まぁ、覚えておられなかったですね(苦笑)」 ただ、本番でトークをすすめているうちに、浅野はだんだんドラマのことを思い出してきた。話は弾み、浅野のマネジャーから「こんなにお話するのは珍しいです」と言われ、最後は抱き合って別れたという。 「いくら役者が好きでも、売れなきゃ続けていけない」と議論した日々から約40年。あの時の仲間は、現在も様々な活躍をみせている。妹尾にとってはそれがうれしいことであり、いまだにライバル心も持ち続けている。 ■妹尾和夫(せのお・かずお)1951年11月17日大阪市大正区生まれ。20代半ばから大阪を拠点にドラマ「部長刑事」「必殺シリーズ」「暴れん坊将軍」に悪役で多数出演。現在、テレビ「せのぶら本舗」、ラジオ「とことん全力投球!!妹尾和夫です」(いずれもABC朝日放送)、「妹尾和夫のパラダイスKyoto」(KBS京都ラジオ)で活躍中。