興奮し飛びつきかみまくるボストンテリアの子犬 追い詰められた飼い主は奇行に走る
足に飛びつきガブッ!
即決し、子犬は年が明けとともに家にやってきた。ボストンテリアの男の子は「秋太郎(しゅうたろう)」と命名。「私の家族は代々、男の子が生まれると名前に必ず『郎』をつける習わしがあったのです。また、誕生日が10月と秋だったこともあり、この子の犬生が実り多いものになってほしいという願いを込めました」とお母さんは語る。 秋太郎くんは、初めて見るものすべてに興味を持ち、飛びついた。「よく言えば好奇心旺盛。思うままに行動するのは確かにマイペースと言えるのかも」とお父さんは苦笑い。お母さんを悩ませたのは、「飛びつき」と「かみ」だった。 「ケージから出すと興奮して、私や夫の足に飛びつき、まとわりついてガブっ! 秋太郎をケージから出すとき、家の中でも私は持っている中でもっとも分厚いスニーカーを常に履いていました」 さらに、小さなボールやおもちゃを数個用意し、それを投げ、秋太郎くんが興奮して追いかけているすきに家事をする、という涙ぐましい「苦肉の策」も。 おうちに来たのは寒い時期。お父さんが服を着せようとすると、いやがってガブガブかみつき、20分以上格闘した。「さすがにヘロヘロになりましたね」とお父さん。お母さんは、「夫が抱っこすると、秋太郎の目に攻撃の炎がメラメラと上がるのがわかるのです。どうしよう、このままではダメだと焦りました」。きちんと育てなければという責任感はお母さん自身を追い詰めていく。
お母さんの奇行
インターネットの情報やしつけ動画などを試してみたが、まったく効果なし。「『飛びついたりかんだりしたときに、過剰に犬にかまってはいけない』と書かれていて、私は頑張って無視したのですが、夫はすぐにかまってしまう。決めたことは家族で共有し、同じ方向を向かないといけないのに、どうしてちゃんとやってくれないの? 叱るときも叱り方が生半可! ……と、常に夫を責めていたようにいます」。そう振り返るお母さんに、お父さんは「秋太郎の育犬において、僕と妻との間に温度差がありました。僕からすると『奇行』に見えることもあって……」。 それはある本に書かれていた対処法。「かまれたら、犬に背を向けてかまれたところを飼い主自身がペロペロとなめる。これを迫真の演技でやる」というもの。「本気で演じました。今思うと夫が言うように奇行ですよね」とお母さん。 「え!? 何やってるの? って驚いたよ」 「あのときは必死だったからね」 顔を見合わせて笑う2人。こんなに仲のいい夫婦がギクシャクしてしまうほど、子犬の存在感、破壊力はとてつもない。もちろんおとなしい子犬もいる。しかし、UGにやってくるほとんどは、家族の心を削り、家の中を険悪にしてしまうほどのハイパー子犬なのだ。 お散歩も苦労した。秋太郎くんはガンとして歩かない。「帰りたいのかキュンキュン鳴き始め、周りから虐待と思われるんじゃないかと不安になり、もうお散歩なんて行きたくないと思ったことも」とお母さん。なんとかしないとと思うなか、このsippoの連載の、同じボストンテリアのアビーちゃんの記事に行き当たる。 「ある日の夕暮れ、秋太郎に出会ったショッピングセンターの駐車場で、夫に『UGに行きたい』と伝えました」とお母さん。お父さんは「正直そこまでしなくてもと思いましたが、ノイローゼ気味の妻の様子に、だったら行ってみようか?と」。その場で車の中からお母さんはUGにカウンセリング予約の電話を入れた。 後編につづく