下町ボブスレーをジャマイカが採用、決め手は町工場ならではの「対応力」
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2011年以降、東京都大田区の町工場を中心に開発を進めてきたボブスレー競技用のそり「下町ボブスレー」。昨年11月、日本の競技連盟から「平昌五輪で採用しない」とする通知が届いて関係者は挫折感を味わったが、年が明けて中米・ジャマイカ代表チームへの採用が決定。挫折は歓喜に変わった。そりへの高評価はもとより、採用の決め手になったのは、日本の町工場ならではの「対応力」だった。
日本代表チームの不採用で、海外に目を向ける
「ジャマイカ代表チームから『下町ボブスレーを使います』と言われた時は、信じられませんでした」と、喜びの瞬間を振り返る下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会の委員長・舟久保利和氏(昭和製作所社長)。 最高速度120~130km/h、『氷上のF1』とも呼ばれるボブスレー用のそりを、大田区の町工場の技術力を生かして開発、製造しようという「下町ボブスレー」プロジェクト。狙いは、五輪競技を通じて同区のものづくりの力を世界にアピールすることにある。ボブスレーのそりは、他競技の道具に比べて同区の町工場が得意とする金属加工技術を生かしやすいことなどの理由で、この競技を選んだ。2011年12月に同委員会の初会合が開かれ、日本五輪代表チームへの採用を目指して開発を開始。これまで、プロジェクトに関わったのは約100社以上、このうち大田区の会社は95%超を占める。 しかし、順風満帆とはいかない。2013年11月に日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟から、2014年ソチ五輪での不採用通告が届く。27件の技術的な改良要望が出され、対応を進めたが結局間に合わなかったことが理由。委員会ではその後、これら改良要望を満たすほか、コーナリング性能の向上や振動のさらなる低減化を実現したソリを開発、捲土重来を期したが、連盟からは昨年11月、2018年平昌五輪で採用しないと通告された。ドイツ製そりとの比較テストで、最高速度、ゴールタイムとも上回れなかったということだった。 委員会は、次の策として、他国の代表チームに下町ボブスレーを提案することを決める。 興味を示したのは、約22年前に公開された映画「クール・ランニング」のモデルとしても有名な、ジャマイカ代表チームだった。早速、年明け早々の1月15日から、長野市ボブスレー・リュージュパークで滑走テストを行うことに。 「試しに来てもらえるだけでもうれしいことだった」と話す舟久保氏。相手の本気度は計り兼ねたが、テストの折は、とにかく誠心誠意をもって応対しようと考えていたという。