エネルギー小国日本の選択(10) 進んだエネルギーの競争力強化と規制緩和
1987年に始まった石油業界の規制緩和
最近は電力とガスの市場競争が報じられることが多いが、石油産業もこの四半世紀、直近5年を見ても様変わりした。 1990年代以降、元売り各社は再編統合を繰り返し、震災前の2010年までに大手5社に集約された。すなわち最大手のJXホールディングスと2位の出光興産、コスモエネルギーホールディングスと東燃ゼネラル石油と昭和シェル石油だ。JXと東燃は今年4月に経営統合してJXTGホールディングスとなり、出光と昭和シェルも合併で合意しており、大手3社の時代となりつつある。 石油業界での規制緩和は電気・ガスより少し早い1987年に始まった。5年かけて段階的に規制緩和を進めるとした「アクション・プログラム」が石油審議会で出されたことが発端だ。1987~1993年に通商産業省による元売り各社への生産枠や原油処理枠、灯油在庫に関する指導が相次いで取りやめられた。これらの措置は生産、販売の分野で競争原理を働かせることに重点が置かれた。 これらが第1次規制緩和とされるに対し、1996~2001年の第2次規制緩和が始まる。生産、販売に限らず、輸入の分野にまで条件緩和で踏み込んだのが特徴だ。1995年に制定された特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)の廃止を含む石油関連整備法が制定された。これに伴い、従来の石油元売りのほか、総合商社などが石油製品の輸入を始めることとなった。 また1998年4月には、監視員が常駐する有人給油方式のセルフ給油を解禁した。こうした流れを踏まえ、セルフ式の給油所ガソリンスタンドは増加傾向。ただ一方で、エコカーの普及や少子高齢化に伴うガソリン需要の減少を受け、給油所の数は1995年3月末の約6万カ所をピークに減少が続き、現在は約半減した。 こうして、社会や企業活動の根幹を支えるインフラ、エネルギーも、競争環境にさらされていくこととなる。できるだけ安く、企業にできることは企業に任す、というのが自由化の理念だが、そうした折に一企業では手に負えないような、社会的反響の大きい事案が2000年代を中心に相次いで起きた。具体的には震災や原子力施設でのトラブルだ。 次回はそうした出来事を踏まえた企業や政府の対応を見ていきたい。