エネルギー小国日本の選択(10) 進んだエネルギーの競争力強化と規制緩和
また1996年には、原油やLNG(液化天然ガス)、石炭など燃料の輸入価格を電気料金に自動的に反映する「燃料費調整制度」も導入された。それ以前は電力各社が円高や燃料価格の下落に対し、個別に値下げを判断していた。そのため、時間差を少なくして迅速に価格へ反映する仕組みが必要とされていた。 なお、2003年には電力会社や卸電気事業者などにより「日本卸電力取引所」が設立された。業界内ではJEPX(Japan Electric Power Exchange)で知られる。すぐに必要な電力の取引を行うスポット市場などができ、2005年4月から取引が始まった。現在、全面自由化された電力市場の需給バランスを支えている。
電力自由化の流れと並行したガス業界の規制緩和
上述の総務庁の1993年の勧告で、ガス業界も電力の自由化の流れと並行して規制緩和が進んだ。ガス事業法もたびたび改正され、1995年を皮切りに1999、2003、2006の各年に制度が改まった。まず、大口の需要家から自由化が始まり、地域独占が見直された。その後、1999年の改正で、料金規制が見直され、値下げは届出制となり、認可は不要となった。その後2003、2006両年の法改正を経て段階的に自由化の対象顧客が広がり、解禁された市場は全体の63%まで広がった。 ガス業界も1996年に電力の燃料費調整制度に相当する仕組みを導入した。原料費調整制度で、主にLNGの輸入価格の変動をタイムリーに反映することが目的だ。ただ、2008年には資源価格の高騰に伴い、制度が見直された。総合資源エネルギー調査会の下に「料金制度小委員会」が設けられ、価格の見直しに当たってきた。 都市ガスが電力と大きく違うのは、導管網が都市部に張り巡らされている一方で、繋がっているエリアは全国の6%ほどに過ぎない点だ。そのため、市場が自由化されても参入障壁は高い。現在競争が激しさを増す電力とガスの全面自由化については別途、詳述する。