エネルギー小国日本の選択(10) 進んだエネルギーの競争力強化と規制緩和
前回は1990年代以降、従来型の成長が行き詰まり、一方で省エネが進んだ背景を主に見てきた。今回はそうした時代における電力とガス、石油の各業界の動向を見ていきたい。 他業界で見られたように、電力とガスの分野も規制緩和が進み、競争力強化が課題となりつつあった。1995年以降、初期の市場開放が始まり、2016年から2017年にかけて実施された小売りの全面自由化に繋がっていく。 石油産業はエコカーの普及などを受け、ガソリンなど石油製品の需要が減少。ガソリンスタンドの数は1995年をピークに減少を続ける。統合再編も進んだ。
1995年に始まった電力自由化
1995年、電気事業法が31年ぶりに改正された。それまで新規参入を阻んでいた規制の壁が徐々に下がることとなった。まずは電力の卸売分野が自由化された。 きっかけは、行政機関の監察を担う総務庁(今の総務省)が1993年に出した「エネルギーに関する行政監察結果に基づく勧告:電力及びガスを中心として」だった。背景には1990年代前半に進んでいた円高がある。内外価格差、つまり「海外では安い電気が日本ではなぜ高いのか」と疑問視する声が各業界で高まっていた。 海外に比べ、相対的に日本が高コスト構造だった理由は、電力会社が地域独占で競争力が働きづらかったことがある。イギリスでは1990年に電力自由化が始まるなど、ヨーロッパを中心とした海外で規制緩和、市場競争の流れが先行していた。
1995年の卸市場の自由化以降、その流れは続いた。国際的に遜色ないコスト水準まで引き上げることを目指した1997年の閣議決定に基づき、1999年に電気事業法が改正された。2000年3月から、2万ボルトの特別高圧で原則2000kw以上の契約の顧客を対象に、小売りが自由化された。 改正の審議では、自由化の対象を拡大することを検討すべきとの報告がなされていた。これを受け、2003年に再度法改正され、2004年4月に高圧で500kw以上の顧客が自由化対象となり、2005年4月には全ての高圧の顧客向けも市場開放され、段階的に拡大した。その結果、年間販売電力量の6割超の顧客の市場が自由化されることとなった。 この大きな流れが、東日本大震災後のエネルギーをめぐる議論も経て2016年4月の各家庭も電力会社を選べる電力小売りの全面自由化へと繋がっていく。