【解説】事件から58年…袴田巌さんに無罪判決 判決で「3つのねつ造」認定
日テレNEWS NNN
事件から58年。静岡県で起きた一家4人殺害事件の再審=やり直し裁判で静岡地裁は、死刑が確定していた袴田巌さんに、無罪判決を言い渡しました。裁判で最大の争点となったのは、赤みのある血痕が付いた5点の衣類です。
これは事件の1年2か月後、みそタンクの中から見つかったもので、袴田さんのものと判断されたことから、死刑判決の決め手となりました。 これについて弁護側は「1年以上みそ漬けされた場合、血痕は黒くなり、赤みは残らない」として、この証拠は捜査機関によるねつ造だと主張しました。 一方、検察側は、血痕が長期間みそに漬かっても「赤みが残ることはある」とした上で、ねつ造は実行不可能な空論だと主張していました。
26日の判決で静岡地裁は、検察側の証人となった専門家が「血痕の赤みが残るかどうかは、みそタンク内の酸素濃度による」と指摘している点について、「たとえ酸素濃度が低くても、1年以上みそ漬けされた場合、黒くなる」として、検察側の主張を退けました。 そして、衣類は事件から時間がたったあとに、捜査機関によって血痕を付けるなどの加工がされ、みそタンクに隠されたとして、ねつ造と認定しました。その上で、これらを証拠から排除した結果、袴田さんが犯人だとは認められないとして、無罪を言い渡しました。
――58年前の事件に無罪判決が言い渡されましたが、これをどう見ていますか? 社会部デスク 宮下哲記者 「無罪判決自体は想定どおりと言っていいと思います。ただ、判決の中で『証拠には3つのねつ造がある』とまで言い切ったことは、かなり踏み込んだという印象です」
宮下デスク 「26日の判決では『自白調書』『5点の衣類』、そして『ズボンの共布』、5点の衣類の内のズボンの切れ端が袴田さんの実家から見つかっていたことも、捜査機関によるねつ造だとしました」 ――最大の争点となっていた『5点の衣類』について、ねつ造だと認めたというのは、どういったことが考えられるのでしょうか? 宮下デスク 「『1年以上、みそ漬けされていた血痕に赤みは残らない』として、衣類は発見される直前に袴田さん以外の人によってタンクに隠されたと判断しました」 「その上で、それを行ったのは捜査機関の者以外に想定できず、さらに当時、袴田さんが無罪になる可能性も否定できない状況だったため『捜査機関がねつ造に及ぶことも想定しうる状況だった』と判断したわけです。ズボンの端切れについても『捜査機関の者によって袴田さんの実家に持ち込まれた』と判断しました」