横浜・寿町ドヤ街 「2階と3階はヤバい奴しか…」横浜ディープゾーンの住人になる 真っ二つに割れていたベランダのガラス
【実録・人間劇場】横浜・寿町ドヤ街編(1) 横浜といえば、観覧車と高層ビルの光が水面にキラキラと反射する「みなとみらい」のイメージしか持っていなかった。 【写真】客待ちをしている立ちんぼと見られる女性ら。奥には女性に話しかける男性も しかし、あるとき所用でJR関内駅に初めて降り立つと、横浜に対する印象がガラッと変わった。駅前に広がる「イセザキモール」には、白塗りの風俗嬢・メリーさんの伝説が息づいていた。その先にある黄金町は約20年前まで売春宿が立ち並び、福富町にはソープランドの間を埋めるように違法カジノ店が点在し、若葉町には外国人風俗嬢が春を売っている。 何より横浜にはドヤ街があった。関内駅と石川町駅の間にひっそりと存在する「寿町」には約100軒のドヤがひしめきあっている。横浜、面白そうな街じゃないか。こうして私は自宅のある歌舞伎町(東京)とは別に、寿町のドヤを契約し、新宿と横浜の2拠点生活を始めたのである。 寿町は大阪の西成と違い、一般の宿泊客を受け入れているわずかなドヤ以外は最低でも1カ月の契約が必要になる。かつてこの街の住人は港湾作業を生業とする日雇い労働者たちがほとんどだった。だが現在は、ドヤに住んでいる人の多くは生活保護を受けながら暮らしている。おそらく生活保護率100%のドヤもあるだろう。それくらいに「福祉の街」へと変化を遂げている。 「すみません、ここは長期で入居できますか?」 その日の寝床にも困っているような素振りで、そうドヤの帳場(フロント)に声をかければ、すぐに部屋を案内してくれる。 「うん、入れるよ。部屋、見る? ちょっと山本さん、704号室に連れていってあげて」 帳場は目の前で、エレベーターを待っていた山本さんという住人に鍵を渡した。私は言われるがまま山本さんについてエレベーターに乗り込む。 「ここで働かれているんですか?」 「いや、住んでいるだけ(笑)。おたく、ここに住みたいの? 2階と3階はヤバい奴しか住んでいないけど、7階なら大丈夫か」(山本さん) 704号室のドアを開けると、隙間からゴキブリが一匹飛び出してきた。床はフローリングだが、たばこをひねり潰したような跡が、アサルトライフルの銃弾を受けたようにいくつも残っている。小さなベランダがついているが、真っ二つにヒビが入った窓は粘着テープで何とかつなぎ合わせているだけだ。