【バスケ】48点差の“圧勝”で天皇杯2連覇を果たした千葉ジェッツ 「パーフェクトに近い」スペーシングをいかに体現したのか
“オフェンスリバウンド”でも生きたスペーシング
高さで劣っているにも関わらず、オフェンスリバウンドで琉球を8本上回ったことも5アウトでいいスペーシングを貫いた事による影響が大きい。パトリックHCが言う。 「コート上でスペーシングを良くしたから、外から中に入ってオフェンスリバウンドが取りやすくなった。(ジョン)ムーニーとゼイビアはよく取っていたし、(荒尾)岳もタップしていた。本当に全員でやってくれました」 リバウンドの強いクーリーやカークのところをドライブで攻めたり、ディフェンスでスイッチさせて外に誘い出し、3Pを打ったりすることで、相手ビッグマンがリバウンドに関与しにくい状況をつくる。すると、ムーニーやクックスが高さで優位に立つことができるため、外から飛び込んでリバウンドを掴みやすくしたのだ。 琉球の桶谷大HCも「シューターをケアするためにウィークサイドで(相手選手に)へばり付き過ぎた。あとは富樫君の3Pを消したくてドライブさせたり、ビッグマンに(パスを)落とされてヘルプに行ったりした時のリバウンドがほとんどでした。そこで自分たちがファイトしきれず、前に入られてリバウンドを取られたのが一番大きい部分です」と語り、千葉Jのオフェンスリバウンドに手を焼いていたことを明かした。
前人未踏の“三冠”への鍵は「何冠とか気にしないこと」
これまで記したように、スカウティングの段階で琉球の弱点を丸裸にし、効果的なゲームプランを練って決勝に臨んだ千葉J。ただ、タイトルの懸かった一発勝負の舞台で、それを高い遂行力で体現することは容易ではない。当然、相手も試合中に修正を試みる。なぜここまでの完成度を40分間貫き、圧倒的な勝利を掴むことができたのか。パトリックHCと富樫は、わずか6日前にあったEASLでの優勝を要因に挙げた。 「私たちはフィリピンでの2試合ですごくいいリズムをつけ、それが失われていない。それが琉球と比べて有利になったのだと思います」(パトリックHC) 「EASLも含めてスケジュール的にはタフですけど、試合勘も含めて優勝して帰って来られたので、その勢いがすごく大きかった。琉球は10日空いての試合だったので、正直リズム的にはかなり難しかったのかなと思います」(富樫) 今シーズンは序盤戦で苦しんだものの、オーストラリア代表であるクックスの加入や怪我明けの原の復調、スミスの復帰が続き、Bリーグのレギュラーシーズンの約3分の2を終えた現時点でチームが仕上がってきている千葉J。27勝15敗で東地区3位、ワイルドカード1位でチャンピオンシップ(CS)進出圏内につける。Bリーグでも優勝を飾れば、前人未踏の“三冠”を達成。それ以前に、天皇杯とBリーグを同じシーズンにどちらも制覇したチームはいないため、文句なしの偉業となる。 ただ千葉は昨シーズン、53勝7敗というB1の歴代最高勝率を記録し、前評判通り天皇杯で頂点に立った一方で、Bリーグファイナルでは琉球に2連敗を喫した。それを踏まえ、原に三冠達成への鍵を聞いてみた。 「『何冠』ということを気にしないことじゃないですかね。もちろん、この後の試合を全部勝つことは大事ですけど、正直もう地区優勝はそこまで狙っていません。アルバルク東京も宇都宮もすごくいいチームなので、そんなに負けることはない。だから自分たちのことにフォーカスして、ワンシーズン戦い抜くことが大事かなと思います」 天皇杯で2連覇を果たしたが、当然昨シーズンの悔しい経験は忘れていない。足元を見詰め、別の山の頂点へ歩みを続ける千葉ジェッツ。二冠王者に、慢心はない。
長嶺 真輝