【バスケ】48点差の“圧勝”で天皇杯2連覇を果たした千葉ジェッツ 「パーフェクトに近い」スペーシングをいかに体現したのか
“5アウト”でスペース創出 「スピード差」で優位に
最近100点ゲームも多い琉球を69点に抑えたディフェンスの遂行力も見事だったが、やはり際立ったのは117点もの大量得点を挙げたオフェンスである。アシスト数が27本に達し、5人が二桁得点を挙げるバランスのいい攻撃を披露した。以下はボール回しの流動性が高かった要因を聞かれたパトリックHCの答えである。 「5アウト(ファイブアウト)でビッグマンを含めて全員でスペースを作って、アタック、ドライビング、キックができたので、ボール回しが良かったと思います」 5アウトとは、コート上の5人が全員スリーポイントライン付近にポジションを取り、あえてインサイドにスペースを作って攻める戦術だ。世界的に見ると小柄で、3Pとドライブを軸にオフェンスを組み立てる男子日本代表「アカツキジャパン」もよく使う陣形である。千葉Jが琉球を相手にこれを採用したのには理由がある。 「根本的に向こうのインサイド選手の方が大きくて、幅が広い。本当に力のあるビッグマンがいる。(高さの)ミスマッチはあったけど、クイックネスという自分たちの有利な点を生かして戦いました」(パトリックHC) 琉球は両チームを通して最高身長となる211cmのカーク、過去に3度B1リバウンド王に輝いたジャック・クーリー、強靭な肉体を誇るアレン・ダーラムという強力なインサイド陣を揃える。ただ、特にカークとクーリーに関してはフットワークが素早いとはいえないため、千葉Jは機動力の高いクックスやスミス、富樫らのクイックネスを生かし、相手ビッグマンを外に誘い出してスピードのミスマッチを突いていった。 その戦略が顕著に見て取れた例が、原修太が第1Qに2度ドライブを仕掛けた場面である。 一回目は第1Q中盤の場面。原が左45度でボールを持ち、ジョン・ムーニーが右側からスクリーンを掛ける。若干ずれができ、ムーニーのマークマンだったカークがカバーに入ると見るや、ギアを一気に上げて交わし、レイアップに行ってフリースロー2本を獲得した。 その約5分後には同じようなピックのシチュエーションから、今度は原の前にクーリーが立ちはだかった。1回目と同じくゴールにアタックして横をすり抜け、今度はファウルをもらいながらレイアップを沈めた。同様なシーンは、試合を通して他の選手がハンドラーとなった際も何度も見られた。さらにペイントタッチからキックアウトをしてフリーのシュートシチュエーションも多くつくったため、3Pの成功率が上がった。 「僕たちにとってアタックしたい選手がいたので、そこをしっかりチームとして突くことができたと思います」と手応えを口にした富樫。その「アタックしたい選手」が主にクーリーとカークだったのだろう。第3Q序盤に富樫が見せたバックカットや、クックスがオフボールでインサイドのスペースに飛び込むカッティングも効果を発揮した。