妻から熟年離婚を切り出され、「退職金」も分割されると知りました。妻が「離婚後のために貯めた200万円」も財産分与の対象になるのでしょうか?
退職金
退職金は財産分与の対象です。まだ受け取っていなくても、勤務先の会社に退職金の規約があり、受け取ることが確実と考えられる場合には財産分与の対象です。 Aさんは1年後に退職金を受け取る予定で、その金額もほぼ確定しています。従ってAさんの退職金は財産分与の対象です。ただし、退職金の全部が対象となるわけではなく、在職期間のうちの婚姻期間に応じて、ということになります。 例えば、在職期間が23歳から60歳までの38年、婚姻期間が30年で、退職金が2000万円の場合、妻が受け取れる金額は ・2000万円÷ 38 × 30 × 1/2 = 789.5万円 です。Aさんはまだ退職金を受け取っていないので、受け取ってから分けるか、離婚の際に退職金の妻の取り分を上乗せして妻に渡すという方法をとることになるでしょう。
老齢厚生年金
年金分割は、離婚する際に、婚姻期間中の厚生年金保険料納付の記録(標準報酬の総額)を多い夫(妻)から少ない妻(夫)に分割する制度です。年金分割には3号分割制度と合意分割制度があります。 3号分割制度では、妻が国民年金の第3号被保険者であった期間の夫の厚生年金の2分の1を分割できます。ただし、この制度が始まったのが平成20年なので、対象となるのは平成20年4月以降の厚生年金記録です。もし夫の合意が得られなくても、離婚から2年以内に妻が請求を行えば分割が行われます。 それより前の厚生年金記録を分割したいときは、合意分割制度を利用します。当事者が話し合って合意するか、合意できなければ裁判手続きによって分割の割合を定め、離婚から2年以内に請求することで分割が行われます。 年金分割によって、専業主婦だった妻にも老齢厚生年金を受け取る権利ができますが、離婚した後は60歳まで自分で国民年金保険料を納めなければなりません。また、夫が亡くなった後に遺族年金を受け取る権利もなくなります。
まとめ
熟年離婚の場合、一緒に暮らした期間が長いが故に、築き上げたさまざまな財産があるため、財産分与で苦労することが多いようです。Aさんは、年金まで分割されることに肩を落としながらも、できるだけ誠意をもって妻と話し合うとおっしゃっていました。 Aさんは定年後も継続雇用されることになっているので、収入は減少するものの、貯蓄も将来の年金も増やすこともできます。思い描いていた老後生活とは異なりますが、自分らしく生きる老後のライフプランを再構築し、実現していってほしいと思います。 執筆者:蟹山淳子 CFP(R)認定者
ファイナンシャルフィールド編集部