魔法のような羽生のSP首位発進。66年ぶりの連続金メダル獲得のシナリオは?
中庭氏は、こんな見方をしている。 「GOEとプログラムコンポーネンツでは羽生選手が2人をリードしています。フェルナンデス選手とは、現在、4.10点差、宇野選手とは7.51点差ですが、それぞれの選手がSPで獲得したジャンプのGOEとプログラムコンポーネンツを考慮すると、フリーではジャンプをおこなう回数の多い点、プログラムコンポーネンツがSPよりも2倍になる点からも、フリーにおいても羽生選手が有利です。故障明けの1番の不安材料であるフリープログラムを考慮して、羽生選手が金メダルを獲得するには、SPで5点差をつけて首位に立つことだと考えていましたが、その条件はほぼクリアしました」 SPでは、羽生とフェルナンデスの演技構成点の差は0.71点、宇野とは、2.46点。だが、GOEに至っては、羽生が14.17点で、フェルナンデスが9.03点、宇野が7.42点で大きな差がついている。SPよりも、エレメンツの増えるフリーでは、これらの差は、ざっと倍になると言われているから、羽生はさらにアドバンテージを得ることになる。 ただ、中庭氏は、「金メダルの可能性はかなり高いと言えるのですが、不確定要素の問題がひとつ残っています。羽生選手の後半です」と指摘する。 「フリーは4分半あります。もし疲労で後半に足が止まってしまえば、すべてが崩れ、ミスなどによりGOEや流れが止まる事によるコンポーネンツの評価も下がってしまいます。今日のSPの疲れがどう出るのか。フリーでは、まだわからない部分です。 もし後半に崩れてしまうと、フェルナンデス選手にコンポーネンツで上回られ、むしろ技術点では、2人に勝る可能性のある宇野選手にも、逆転の芽が出てくることになります。 だから、なおさら羽生選手のフリーのプログラム構成が重要になってきます。私は、前にもコメントしましたが、ルール上4回転2種類を2本入れた場合、トリプルアクセルは1本しか入れる事ができません。トリプルアクセルでSPのようにGOEで満点の『3』を取れるのですから、4回転はサルコー、トゥループだけの3本に抑え、トリプルアクセルを2本入れて、ジャンプの質でGOEを稼ぎ、作品としての完成度を高める方向でいいのではないでしょうか。後半のスタミナを少しでも温存することができますし、ミスのリスクも減らすことができます。 ただし、今日のような羽生選手のもつ強さを超えた神々しくもある演技を目の当たりにすると、このようなものは単なる余計な心配事になるかもしれません」