【Around30】「女子アナ30歳定年説」の中、29でフリーに転身 五戸美樹さん
かくして本番中も思わず泣いてしまい、時にリスナーを心配させてしまう新人の五戸美樹アナウンサーは、一度中継を離れ、さまざまな番組で経験を積み重ねたのち、今年再び中継を担当する。中継の現場では、初めて会う人にも「みきちゃん!」と気さくに声をかけられる。中継に毎度駆けつけるような熱心な人もいる。五戸さんは、来てくれた人の希望に応え、中継が終わった後に一緒に写真を撮り、サインにまで応じている。 “会いにいけるアイドル”ならぬ、“タダで会いに来てくれるアナウンサー”が、彼女なのだ。 五戸さんが主に担当していた中継コーナーは、朝9時20分ごろに最初の出番を迎える。そのために朝6時半頃に出社する。中継終了後、握手会を終えると、翌日の中継場所に移動し、電波チェックと、街ネタの取材に行き、会社に戻るのは昼過ぎだ。 ただ、昨年は「スタンバイ」の仕事が多かった。放送局は地震などの自然災害などがあったときに速やかに正確な情報を放送する役目がある。だからラジオでもテレビでも、アナウンサーは常に、カメラやマイクの前に立てるように準備して待つという仕事が存在する。 「スタンバイ」は何もなければ何もすることがない。とにかく待つのが仕事だ。このとき彼女は思った。スタンバイは大事な仕事、でも、もっとしゃべりたい、スタンバイをやりながらでも、朝も昼も夜も関係なく働いてみたい。子どもができたら、バリバリ働くことはできないかもしれない、その前に、アナウンサーとしてもっと自分を試してみたい。挑戦したい。 五戸さんは2014年に結婚している。その気持ちは中継を担当することになってからも変わらなかった。 元々は、どうして苦労して入社した会社をやめてフリーアナウンサーになる方がいるんだろうと疑問に思っていたが、実際に局アナとして働いていくうちに考えが変わったのだという。 巷では「女子アナ30歳定年説」などと言われているが、働きたくとも、出産をするとなると、一時期休まざるを得ない。総務省統計局の「労働力調査年報」を見てもわかるように、女性は25歳を境に労働人口が減少する。第1子を出産する平均年齢は30.3歳(「人口動態統計」厚生労働省2012年)であるから、出産や子育てで一度仕事を離れていることがわかる。決して番組側が若い女子アナを使いたいからと、出番が少なくなり、会社をやめるというわけでない。問題は、仕事がのってくる時期と、子どもが欲しいと思う時期が重なってしまうことだ。