“ニュース映像”を勝手に編集・改変「クルド人差別」煽る動画をX上に投稿 著作権侵害や名誉毀損は成立するか?
名誉毀損は「特定の人・団体」を対象にしている場合に成立
前記した通り、今回の投稿は単に動画を短くしただけでなく、映像の趣旨を変えてクルド人に対する偏見や差別を煽ることを狙ったと批判されている。 一般的に、このような偏見や差別を煽る言説・表現は「ヘイトスピーチ」とされる。また、在日クルド人とテロ組織が結びついているかのように思わせる表現は、在日クルド人集団に対する「名誉毀損」であるとも考えられる。 では、著作権侵害ではなくヘイトスピーチや名誉毀損の観点から、今回の投稿が処罰の対象となる可能性はあるのだろうか。 現在、ヘイトスピーチを直接規制する法律はない。しかし、大阪市や川崎市、相模原市など一部の自治体はヘイトスピーチを規制する条例を制定している。 「今回の投稿も、各自治体の条例における『ヘイトスピーチ』に該当する場合には、その規制対象になります」(中野弁護士) また、問題の動画が特定の人・団体の社会的評価を違法に低下させるものである場合には、名誉毀損罪が成立する。ただし、動画によって社会的評価が低下させられるのが「在日クルド人」という抽象的な集団である場合には、名誉毀損罪の成立は難しいという。 「同じく、名誉毀損に関する損害賠償などを民事訴訟で請求する場合にも、動画が特定の人・団体を対象にしているといえるかどうかが争点になります。 いずれにせよ、こういう投稿をしてはいけないのは、当然のことです。様々な規制の対象になりえると理解しておくべきだと思います」(中野弁護士)
弁護士JP編集部