“ニュース映像”を勝手に編集・改変「クルド人差別」煽る動画をX上に投稿 著作権侵害や名誉毀損は成立するか?
近年では在日クルド人に対するネット上の差別が深刻に
近年、川口市や、同じく埼玉県の蕨(わらび)市に住む在日クルド人に対する差別的な言説がインターネットを中心に拡散しており、社会問題になっている。また、JR川口駅やJR蕨駅周辺では、クルド人の排斥を主張する「ヘイトデモ」と対抗する「カウンターデモ」が定期的に行われている。 3月には、在日クルド人を中心とする14名(うち法人が2社)がジャーナリストのSNS投稿によって名誉毀損・信用毀損を受けたとして、損害賠償を請求する訴訟を提起している。 9月下旬には「川口市のダイソー系列のスーパーでクルド人の子どもが万引きしているのをよく見かける」との情報がX上で拡散。27日にジャーナリストの安田浩一氏が本社に取材して「万引きの事実は確認できない」との回答を得たが、同様のデマや臆測はこれまでにも数多く投稿・拡散されてきた。 今回の動画も、在日クルド人とテロ組織の結びつきという「懸念」が事実であるかのように編集していることから、ネット上における一連の「在日クルド人差別」に連なるものとして批判を浴びた。 一方、テレビで放送されたニュース映像を無断で編集・転載する行為そのものに、動画の内容や意図とは別に法律的な問題が含まれているのではないだろうか。著作権に詳しい、中野雄高弁護士に聞いた。
無断使用は「著作権」、改変は「著作者人格権」に違反
まず、ニュース映像は「著作物」であり著作権法の対象となるため、本件は著作権侵害にあたる、と中野弁護士は述べる。 「元の著作物を全く改変することをしていなくても、許諾なく無断で使用することは、当然に著作権の侵害になります。 著作権には『私的使用目的の複製』や『正当な範囲内での引用』など、いくつかの権利制限規定が設けられていますが、問題の投稿はそれらにあたりません。 したがって、投稿者はテレビ朝日の著作権を侵害したといえるでしょう」(中野弁護士) さらに、投稿者は動画の後半を切り取り前半だけを投稿するという「改変」も行っている。著作物を無断で改変する行為は、「著作者人格権」の一種である「同一性保持権」の侵害だ。 著作権・著作者人格権の侵害は、民事的な損害賠償や差し止めの対象となりえる。また、著作権法には刑事罰も規定されているため、刑事罰の対象になる可能性もある。