放送界の先人たち・武敬子氏~「男女7人夏物語」にさんま起用のわけ~【調査情報デジタル】
久野:だんだんテレビが面白くなっていったんじゃない? 武:いろんな役者さんと仕事出来るし、いろんな作家と話ができるっていうのは面白かった。それとやっぱり、取材っていうのが面白かった。安部さんはそうでもないけど、秋元さんは、ほんとに足で書く人だったから。 ■作家 秋元松代との仕事 久野:秋元さんとの出会いは「山ほととぎす」なんだけど。 武:仕事してもらいたいって言ったら、もう言下に「あたしに書かせなさい。原作要らない」って言うわけ。びっくりしたけど、高浜虚子※については、割にちゃんと勉強してるし、よく知ってるし。先生のお兄さんが高浜虚子の弟子だとは、その頃知らなかったの。 ※ 高浜虚子(1874-1959)明治から昭和初期に活躍した俳人・小説家。俳誌「ホトトギス」の発行人として知られる。「山ほととぎす ほしいまま」の主人公杉田久女は俳句の師であった虚子を敬慕し続けたものの、何らかの確執から破門され、不遇の後半生ののちに病死する。秋元松代の兄は俳人秋元不死男。 それで、(モデルになった杉田久女の)お嬢さんが結婚して、石さんっておっしゃったんだけど、その人にお母さんの話を聞いてたら、もう、おんおん泣きだしてね、その石さんが。 久野:それが、栗原小巻がやったあの役の人でしょ。 武:そう。おんおん泣きだして。あたしは、困ったなと思ったけど、先生、全然困ってないんだよね。 久野:うん。 武:冷静だから。なんか面白いな。やっぱり、鬼のような先生だったね。女の人であれだけ書ける人っていうのはいないし。あたしがすごく好きなのは、偉いところ、強いところ、大きなところにぶつかっていく姿勢。 ホームドラマが大ヒット 久野:その後RKBを辞めて東京に行く。 武:安部公房さんに東京来いって言われてたわけ。行って何するんですかって聞いたら、俳優座に入るか、俳優座の養成所の先生になるか、どっちかやれっていうけど、どっちも気が進まない。でも、何か仕事をしなきゃいけない。