歌舞伎座公演「十二月大歌舞伎」は豪華な顔ぶれ見どころたっぷり 中村獅童・長男のちょっと色気、幼いながらに情感をこめた演技に驚き
◇コラム「芸能リポーター・山﨑寛代のぶっちゃけトーク」 12月の歌舞伎座公演「十二月大歌舞伎」(26日千秋楽)は、顔ぶれも豪華で、見どころたっぷりです。 第1部は、絵本発刊30周年を記念して上演される『あらしのよるに』。オオカミの「がぶ」とヤギの「めい」の秘密の友情を描いた演目ですが、今回から幼いころのエピソードが付け加えられ、中村獅童さん(52)の長男・陽喜くん(6)が「めい」を、次男・夏幹くん(4)が「がぶ」が演じています。2人とも「がぶをやりたい」と配役でケンカになるかと思ったら、兄の陽喜くんは自ら「めい」をやりたいと言ったそうです。 「いつかは女形ができる立役になりたい」という将来の夢があるそうで、頼もしい限りです。そんな陽喜くんが演じる「めい」が、けがをしてぐったりして抱えられる場面で見せた表情。ちょっと色気があって、幼いながらに情感をこめた演技に驚きました。この作品のテーマは「自分らしく生きていれば仲間ができる」は、父・獅童さんから子どもたちへの思いが込められています。その思いを受け取った陽喜くん、夏幹くんによる「あらしのよるに」をいずれは見てみたい!と、思わせてくれました。 第2部は、世話物『加賀鳶』と、舞踊『鷺娘』。中村七之助さん(41)が鷺の精を勤める鷺娘は、錦絵のような美しさです。七之助さんは今、最も輝いている女形の1人。鑑賞できるのは眼福です。雪が降りしきる中、白無垢(むく)姿の七之助さんが登場すると思わず息をのむ美しさ。鷺の精らしく細やかな足使い、そしてかなわぬ恋に思い悩む姿に劇場が静まり返りました。そして一転して華やかな踊りに。娘心を訴える場面ではなめらかな踊りで、とても見事でした。七之助さんの艶やかさ、妖しさが込められた踊り、そして最後は鷺の精が激しく踊る場面、全身を使った踊りは恐ろしいほど艶やかで、思わず大きなため息、感動しました。 第3部は『舞鶴雪月花』。中村勘九郎さん(43)が、祖父が初演で踊った変化(へんげ)舞踊の町娘、松虫、雪だるまの1人3役を踊り分けます。勘九郎さんの娘役は久しぶりに拝見しましたが、七之助さんとはまた違った可愛らしさ。松虫では、次男の長三郎くん(11)と親子共演。長三郎くんが歌舞伎座の舞台に1人で堂々と踊り、バランスも崩さず、体幹がばっちりで驚きです。今しかできない、かわいらしい親子踊りも見どころのひとつになっていました。 そして『天守物語』。坂東玉三郎さん(74)が当たり役の「富姫」を10年ぶりに演じています。その相手役の図書之助を市川團子さん(20)が初役で勤めます。今、私の一番の推しです。 玉三郎さんは体力的なこともあって、富姫を再び演じるつもりはなかったそうです。私たちも玉三郎さんは大劇場の出演からの引退を示唆していましたし、昨年12月の歌舞伎座では、七之助さんが玉三郎さんの指導のもと富姫を勤めました。最近の玉三郎さんは、自身が勤めてきた大役を若手に継承してもらおうと育成に力を入れていましたので、富姫は七之助さんに受け継がれたと思っていました。なので、まさか玉三郎さんの富姫を歌舞伎座で見られるとは!!とても貴重なことです。 玉三郎さんをその気にさせたのは團子さんです。きっかけになったのがスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」。市川猿之助さんの代役で急な出演でしたが、5カ月間見事にやり抜いた團子さん。そのヤマトタケルを玉三郎さんが見て、彼の図書之助でもう一度富姫を演じてみたいと思ったそうです。團子さんは凛(りん)としていて、涼やかな通る声で純粋でいちずな気持ちを表現しています。一瞬にして富姫が恋に落ちる気持ちが分かるほどのりりしさです。玉三郎さんと團子さんが見つめ合うシーンの美しいこと。幻想的な世界に酔いしれました。今年は飛躍の年になった團子さんですが、玉三郎さんの指導を受け、今後どのように活躍していくのか楽しみです。 ▼山﨑寛代(やまざき・ひろよ) FM群馬での勤務を経て、TBS系「3時に会いましょう」「スーパーワイド」、テレビ朝日系「スーパーモーニング」などワイドショー・情報番組でリポーターを務める。朝日放送系「おはようコールABC」出演を機に芸能リポーターとして、現在はテレビ朝日系「羽鳥慎一のモーニングショー」、福岡放送「めんたいワイド」に出演中。旧ジャニーズ事務所や歌舞伎などを中心に取材している。
中日スポーツ