予土線で「モーダルミックス」実証実験、JR乗車券でバス乗車OK…5時間近い鉄道空白時間の利便性向上へ
JR予土線を利用する人たちの利便性向上を図ろうと、愛媛県は、宇和島(愛媛県宇和島市)―松丸(松野町)駅間で有効なJR定期券や切符で、同区間をほぼ並走する宇和島自動車の路線バスに乗れる実証実験を始めた。松丸では、宇和島方面へ通学する高校生らが乗る朝の列車が出た後は、最大5時間近くの空白時間があるなど、観光客を含めた鉄道利用者の使い勝手が課題になっている。県は来年1月末までの予定で利用状況などを検証する。(斎藤剛)
「モーダルミックス」と呼ばれる事業の同様の実証実験は、予土線の高知県側で昨年実施されたが、愛媛では初めて。香川県東かがわ市内のJR高徳線の一部区間では今年4月から、通学定期券を持っている学生を対象に、路線バスを利用できるようになっている。 愛媛県松野町の中心地にある松丸駅では、午前7時48分に宇和島行きの下り列車が出た後は、午後0時35分発まで5時間近く、下り列車が来ない。宇和島発の上りでも松丸に行く列車は午前6時発の後は同9時33分発までないなど、利便性向上が課題になっている。 実証実験は、県がJR四国、宇和島自動車と連携して5日に開始。バスを利用する際は毎回、宇和島駅などに置いている調査票に、乗降のバス停や、持っているJR乗車券の種類などを記入し、降車時に運転手に渡す必要がある。宇和島自動車には、利用があった運賃分を県やJR四国が負担する。
松丸から宇和島に向かう便では、1日8便の列車に加え、実証実験では、同区間を結ぶバス8便(日祝日のみ運休2便、学校のある日のみ運行1便を含む)に乗ることができる。松丸に行く上り列車も1日8便に加え、バス9便(同)を利用することができる。 松丸よりも宇和島寄りにある近永駅(鬼北町)へ宇和島から行く場合は、松野町行きのバスのほかに、日吉支所(同)方面行きのバスに乗り、近永前のバス停で下車することもできる。
7日夕、松野町から県立宇和島東高校(宇和島市)に通う3年生3人が下校で実証実験に参加。宇和島駅前からバスに乗り、下車時にJRの通学定期券を運転手に見せ、調査票を渡した。生徒(18)は「テスト期間中など、早く下校する場合は列車がなくて待ち時間があった。交通手段の選択肢が増え、時間を効率的に使えていい」と歓迎。別の生徒(18)は「便利でありがたい。朝早く学校に行きたい時もバスの方が早い時間に出発するので使いたい」と話した。 県交通政策室は「利用状況を調べ、公共交通の需要掘り起こしにつなげていきたい」としている。