戒厳に向けた「北風工作」疑惑と不明確な国防部の答弁…高まる捜査の必要性
尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が平壌(ピョンヤン)への無人機(ドローン)浸透、汚物風船を飛ばした原点打撃などで、北朝鮮との軍事衝突を誘導した後、これを口実に非常戒厳を宣布しようとしたという「北風(北朝鮮の脅威を強調し国内政治に利用しようとする動き)工作」疑惑について、国防部が事実関係を明確にしておらず、捜査を通じて関連疑惑を究明する必要性が高まっている。 今年10月、北朝鮮が「韓国から送られたドローンが平壌上空に侵入した」と発表した時、韓国国内では信じがたいという反応が多かった。韓国と米国は軍事偵察衛星と各種偵察機などを利用して北朝鮮全域を監視することができるため、南北武力衝突の危険を甘受してまで平壌に偵察用無人機を送る合理的な理由がないと考えたためだ。 ところが、「12・3内乱事態」以降、雰囲気が急変した。尹錫悦大統領と軍に布陣した側近たちの判断能力に深刻な疑問が生じたことで、北朝鮮の挑発を誘導して非常戒厳を宣布するために平壌に無人機を送った可能性も十分あるという見解が説得力を増している。野党「共に民主党」のパク・ポムゲ議員は9日、国会国防委員会で「北朝鮮が10月、『韓国のドローンが平壌上空に浸透した』と主張したのは、実際に韓国軍の作戦によるものであり、これはキム・ヨンヒョン前長官の指示によるものだという情報提供を軍内部から受けた」と明らかにした。パク議員は「戒厳を前提にしたのではないか」と述べた。 同党のプ・スンチャン議員も12日、資料を公開し、平壌に送られた無人機は「騒音が大きく戦闘用として不適合との判定を受けたドローン機種を、北朝鮮に発見してもらうために(意図的に)投入したもので、北朝鮮の報復軍事行動を誘発し、南北の局地戦に持ち込むためとしか考えられない」と主張した。この無人機は少なくとも2キロメートルの半径で騒音が聞こえるほどうるさく、実戦用ではなく教育訓練用でしか使われていなかったという。 8日、ドローン作戦司令部の隷下部隊内のコンテナで火災が発生した背景も、捜査で明らかにされなければならない。民主党のキム・ビョンジュ議員は「この火災で平壌に送られた無人機の装備が燃えるなど、証拠隠滅が行われたという情報提供を受けた」と主張した。国防部は13日、この火災は放火ではなく電気系統の異常によって発生したという調査結果を発表した。 問題は、10月以降国防部が「平壌に無人機を送ったのか」という質問に「何も言えない」という曖昧な態度で一貫し、疑惑をさらに大きくしているという点だ。国内で平壌に浸透した無人機と似た機種を運用できる部隊としては、地上作戦司令部、ドローン作戦司令部、情報機関などが挙げられる。捜査当局が強制捜査に乗り出し、これらにあるドローンの飛行記録、無人機の在庫などを確認すれば、関連疑惑を究明できるものとみられる。 キム・ヨンヒョン長官(当時)が先月、北朝鮮との局地戦を誘導するために、北朝鮮が汚物風船を飛ばしている場所を精密打撃するよう合同参謀本部(合参)に指示したという疑惑も、捜査で究明しなければならない。野党の主張によると、「12・3内乱」5日前の先月28日、合参は北朝鮮が今年32回にわたり汚物風船を飛ばしたことに関する脅威評価会議を開いたが、会議を開いていたキム・ミョンス合参議長にキム長官が電話し、北朝鮮が風船を飛ばしている場所に対する精密打撃を求めた。ところが、キム合参議長は「風船による国民の被害が発生していないのに、精密打撃を行うのはこれまでの国防部の方針に反する」として反対したという。 風船を飛ばす場所を精密打撃するのは、韓国軍が北朝鮮の黄海道地域を砲撃したり、戦闘機で攻撃することであり、北朝鮮が反撃した場合、局地戦に発展する危険性が高い。北朝鮮が風船を飛ばす場所を精密打撃するのは、無人機による平壌への浸透と同様に休戦協定違反であり、国連司令部(米国)を無視し、韓米関係にも悪影響を及ぼし兼ねない。 先月27日午後、白ニョン島(ペンニョンド)に配備された海兵隊第6旅団が、K9自走砲約200発を発射する海上射撃訓練を西海(ソヘ)北方限界線(NLL)一帯で行ったことも、捜査が必要な事案だ。2010年11月に行われた延坪島(ヨンピョンド)砲撃戦は、延坪島海兵隊によるK9自走砲海上射撃に北朝鮮が反発して起きた。当時、北朝鮮は延坪島と白ニョン島付近の海が北朝鮮の領海だと主張し、海兵隊の海上射撃訓練を領海挑発と見なして攻撃してきた。北朝鮮がNLLを南北海上境界線として認めていないうえ、今年南北関係を「敵対的二国」と規定したため、北方限界線一帯の海上砲射撃は南北武力衝突の火種になりうる。 クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )