「箱根リトリート före & villa 1/f」に泊まってみた
ホテルマネージメントジャパンが運営する「箱根リトリート före & villa 1/f」(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286-116)は、今年8月に7棟のヴィラを新設している。先日、その1棟に宿泊する機会があった。 【画像】敷地内には全3棟37室のホテル棟や全18棟のヴィラ、レストランなどが建ち並ぶ 同施設は、箱根と御殿場を結ぶ国道138号線沿いの仙石原の森のなかに佇む。スウェーデン語で「前へ」を意味するföre(フォーレ)エリアと、リラックス効果をもたらすとされる「1/fゆらぎ」をコンセプトにしたvilla 1/f(ヴィラ ワンバイエフ)エリアに分かれており、前者は北欧スタイルのホテル棟(全3棟37室)、後者は個性豊かなヴィラ(全18棟)の2つのエリアで構成される。 これに加え、芸術家や文化人に愛された温泉旅館「俵石閣」を改装し、本格的な懐石料理をゆったりと楽しめるようにした「料亭 俵石(ひょうせき)」、朝食時はビュッフェ、夕食時には薪焼きコースディナーを提供するレストラン「WOODSIDE dining」、滞在中にコーヒーや紅茶を無料で楽しめ、専属パティシエが作るスイーツも楽しめる「cafe & lounge」、ブックライブラリー併設の開放的な空間でウェルカムサービスなどが受けられるフリースペース「free bird & terrace」といった飲食関連施設と、大浴場の「Onsen f」、スパトリートメントが受けられる「KONOHA Spa treatment」といった施設がある。 今回宿泊したのは8月に新設されたばかりの「15号棟」。90m2の広々としたスペースのなかにベッドや家具が置かれ、一段下がった窓側にソファと薪ストーブが配置され、俵石閣時代には池があったとされる内庭を眺めながら過ごせるようになっている。もちろん浴室には温泉が引かれており、贅沢にゆったりとしたバスタイムが楽しめる。 部屋に入ってしばらくして気付かされるのは、室内にテレビが設置されていないこと。室内の静寂は自然の息遣いを感じさせてくれ、コーヒーを淹れれば、その香りもいつもより敏感に感じ取れるようになる。こうしたテレビなしの空間作りは、ヴィラのみならずホテル棟でも実践されており、慌ただしい現代社会において、自然のなかで“何もしないこと”の価値を気づかせてくれるようだ。 かと言って、寝るだけの機能しかない山小屋とは異なり、Wi-Fiサービスもきちんと利用可能で、ベッドサイドのUSB充電ポートは一般的なType-Aに加えてUSB PD対応のType-Cポートを備えており、スマートフォンなどとペアリングして利用できるBluetoothスピーカーも用意されている。 簡易的なキッチンには、手回し式のコーヒーミルや湯沸かしポットが置かれており、自分自身でコーヒーを淹れるという、ゆとりの時間も楽しめる。キャビネットに潜む冷蔵庫には無料の各種ドリンクも用意されている。 今回の滞在では、夕食は料亭 俵石、朝食はWOODSIDE diningでいただいたが、それぞれ各ヴィラからは距離がある。部屋からフロントに電話をかけると、電動のゴルフカートで送迎してくれるが、晴れていれば散歩がてら森のなかを歩くのもいいだろう。 料亭 俵石は大正時代の数寄屋造りの建物をそのまま移築し、旅館として営業し、与謝野晶子などの文化人に愛用され、皇室の利用記録も残されているという。そうした歴史は、網代天井や透かし彫りなどの豪華な建具や不規則な歪みが手作りであることを教えてくれる大正ガラスとしてしっかりと残されており、自分自身の時間もゆっくりと進んでいるかのように錯覚する。 そんな歴史を感じさせるダイニングでは、京都の旅館やホテルで腕を磨いた濵中明利料理長が地元の旬の食材を活かして生み出した懐石料理が楽しめ、気がつくと地酒が進んでいる。せっかく同施設に泊まるなら、1食だけでもいいので、ここで食事したい。ちなみに、庭園付きの12号棟と13号棟では周辺の海産物や畜産物、地場野菜に料理長が一手間加えて下ごしらえした食材によるBBQもオーダー可能となっている。 2名1室の宿泊料金(夕朝食付き)は、ヴィラが1名5万円前後~、ホテル棟が1名2万6000円前後~。四季の自然が感じられる静かな環境は、ファミリー向けというよりカップル向けといった雰囲気で、施設の名称にもなっている“リトリート”を目的にしたい人にオススメだ。
トラベル Watch,編集部:湯野康隆