1歳で話し始めた後「単語の数」がなかなか増えない理由とは…「ブーブ」「ワンワン」指さしで単語を言ってもその意味は赤ちゃんへ十分に伝わらない
「子どもはラクラクとことばを覚えられてうらやましい」「幼い時から外国語に触れていたら、今頃はバイリンガルになれたのに…」。いずれも「ことばの学習」についてよく耳にする一言です。一方「赤ちゃん研究員」の力を借りて、人がことばを学ぶプロセスを明らかにしてきた東京大学の針生悦子先生は「赤ちゃんだってことばを覚えるのに苦労している」と断言します。その無垢な笑顔の裏で、実は必死にことばを学んでいた…あなたは信じられるでしょうか? 書籍『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』をもとにした本連載で、赤ちゃんのけなげな努力に迫ってまいりましょう。 【書影】赤ちゃんのけなげな努力に感動…『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』 * * * * * * * ◆足踏みの理由 1歳頃から子どもは単語を話し始めます。 ただし、そこからすぐに、話すことのできる単語の数が爆発的な勢いで増えていくわけではありません。 この足踏みの理由ですが、一つは、この時期の子どもは指さしや視線の理解がまだ不安定で、相手が言った単語を結びつける先を探すのにまだまだ苦労しているから、ということがあるでしょう。 ただこの時期の子どもの単語の使い方を見ていると、足踏みの理由はほかにもありそうです。
◆解釈の仕方がグラグラ定まらない まず子どもの単語の使い方は、大人から見ると、ヘンに限定されている場合があります。たとえば「家の窓から見た車にしか『ブーブ』と言わない」といった具合です。 同時に、単語が、あまりにもさまざまな対象に使われすぎる、ということも見られます。つまり単語の意味が広すぎるのです。 たとえば、散歩の途中で見かけたチワワのことを「ワンワン」と教えたら、チワワだけでなくすべての犬種、さらには、猫や熊のぬいぐるみもすべて「ワンワン」になってしまったりします。 大人の方は、子どもにその対象を示して、「ブーブだね」とか、「ワンワンだよ」と教えれば、それでもうその単語の意味はわかってもらえるものと期待しています。ここで例に挙げた「ブーブ」や「ワンワン」の事例でも、子どもは、その単語をその対象と結びつけることには成功したようです。 しかし、その単語の使い方を見ていると、狭すぎたり、広すぎたり、解釈の仕方がグラグラと定まらない感じです。どうしてこのようなことになってしまうのでしょう。