トラックドライバー不足による「2024年問題」“対応”はどのくらい進んでいるのか? 専門家が解説
◆大手企業でも3割は「対応が難しい」「未定」
吉田:労働規制の強化が始まるまで3ヵ月を切りましたが、対策はどの程度進んでいるのでしょうか? 塚越:先程のアンケート調査では、他に物流コストの価格転嫁(=値上げ)について聞いており、すでに転嫁している企業も含め、転嫁する方針が7割となっている一方、「転嫁したいが難しい」が25%、「転嫁しない」も4%あります。 また政府は大手荷主企業に対して、物流の効率化等に関する計画策定を義務付ける法整備を今年中に進める方針ですが、こちらは7割を超える企業が計画を「策定済み」「策定予定」としたものの、4分の1は「未定」となっています。値上げやさまざまな準備が「できています」と回答しているのが7割程度。3割近くの企業は対応が難しいとのことです。 「7割程度、準備できているじゃないか」と思う人もいるかもしれませんが、このアンケートの対象は大手企業であり、回答していない企業もあれば、対象外の中小企業もたくさんあります。その点も考慮すると、実際はより厳しい状況になると考えられます(もちろん、今後は能登半島地震の影響もあるでしょう)。
◆一般ユーザー向けには「急がない便」の選択肢も
ユージ:例えば現在、どのような対策が進められていますか? 塚越:実際の対策としては、例えば、トラックの荷台の部分を連結させてドライバー1人で運べる量を増やす「ダブル連結トラック」という方法があり、専用スペースが作られています。去年9月段階で269台分設置し、さらに増やす方針ですが、ちょっと少なすぎる印象です。 他にもドライバーさんが日帰りできるように、目的地の中間地点で運転を変わってもらう「リレー方式」の導入や、荷物を一度に多く運ぶため、トラックから鉄道や貨物船に代替する「モーダルシフト」など、できることはおこなっているという印象です。 また、一般ユーザー向けですと、例えばネット通販サイトの「楽天」では、セール期間中に配達日を通常より遅らせたユーザーには楽天ポイントを付与する「急がない便(仮)」の導入を検討しているとのこと。実際に2022年に楽天がこのポイントを付与する実証実験をおこなったところ、配達日を指定しないユーザーは通常の3.5倍に増えたといいます。 これに関しては、民間調査機関の「MMD研究所」が去年5,000人を対象におこなったアンケートによると、「急がない便」があれば「利用したい」と答えた人は87.1%。年会費や特別料金を払うことで早めに配送をしてもらえる「お急ぎ便」はありますが、今後はポイントなどがつく「急がない便」も選べることで、良いことだなと思います。