イチローの契約が決まらないもうひとつの理由。「偉大すぎて敬意を欠く」
イチロー(43)の2018年シーズンのプレー場所がまだ決まっていない。 先日、シアトル郊外で行われた大リーグのトライアウトに顔を出すと、駆けつけたメジャーのスカウトの中に、知った顔があった。 終わってから、しばし雑談。イチローの話題になったとき、「キャンプまでには決まるんじゃないか。まだ、外野のマーケットがさほど動いていないから」というスカウトがいる一方で、「難しいかもしれない」というスカウトもいた。 「例えば、マイナー契約でもいいなら、簡単なことだ。でも、それをイチローに対して出来るか?」 確かに、チームにとって、マイナー契約を交わして春のキャンプに招待することにリスクはない。戦力になると判断すれば、そのままメジャー契約すればいい。ダメだと思えば、メジャー契約をしなければいいだけのこと。 ただ、対象が、記録と記憶に彩られたキャリアを誇り、引退すれば、殿堂入りは間違いないといわれるイチローとなると、話が違ってくるーー。 「あのイチローにマイナー契約をオファーするのは、敬意を欠く行為にもなるのではないか」 2015年1月、マーリンズもずいぶん悩んでいた。イチローに、控え外野手の役割をオファーしようとしていたのだ。 当時のGM(ゼネラルマネージャー)で、その年のシーズン途中からマーリンズの監督を務めたダン・ジェニングス(現ナショナルズスカウト)が、こんなふうに振り返ったことがある。 「マーリンズには、外野に3人のレギュラーがいた。それは固定だった。ということは、イチローが来ても、ポジションを奪うチャンスさえ与えることができない。控え外野手として契約したい、と申し出るのは失礼なんじゃないかとか、いろいろ考えたよ」 ただ、「そのことを納得した上で来てもらう必要があった。そこは交渉の時、何度も念を押した」とジェニングス。「結果として、断られても仕方がないと考えていた」そうだが、イチローはすべてを理解した上で、入団を決意した。 「彼は、本当のプロフェッショナルだった」 では今回、イチローにマイナー契約をオファーすることは、本当に敬意を欠く行為なのか。そもそもイチローは、それを受け入れるのか。