今年の夏も振り返れば災難続き…!?「ぼる塾」あんりさんと”夏”の妙な関係
今年の夏も、そりゃあもう散々でした。 それからは暑さを感じる度に夏への恨み言は止まりません。 夏なんて早く終われ。 夏なんてもうなくなってしまえ。 そんな私に抵抗するように気温は日に日に暑くなる。 あー嫌いだ、大嫌いだ、もうすでに来年の夏のことまで憎い。 だけど、涼しさを感じ始めると自分の夏への怒りも冷めてくる。 夏の終わりを告げる瞬間がいくつも訪れる。 蝉の声が聞こえない。 ハンディファンの充電が減らない。 電車で浴衣を着た女のコ達が降りた駅の祭りをググらない。 フレッシュネスバーガーを見つけたら、とりあえずライムソーダを確保しない。 ガリガリ君やスイカバーを食べるときに焦らない。 冷やし中華の文字を街で必死に探さない。 あれ、私意外と夏を楽しんでた? いやいやいや、まさか、そんなわけないか。 ある日の午後。 田辺さんと私は同じ電車に乗ってそれぞれ別の仕事に向かう。 電車内にはもう半袖じゃない人も乗っている。 田辺さんは暑がりをカッコいいと思っているのか、私が長袖を着始めるのは2月からだと言っている。 何年か前には11月からだと言っていて、田辺さんが言う半袖から長袖に変わる時期は年々のびている。 本当のことは田辺さんの名誉のために言わないでおくけど、実を言うとそんなのどうでもいいし、皆さまも大して興味がないんじゃないかと思う。 田辺さんがそう言っているんだから、それでいい。 田辺さん「今日仕事終わりに、ラストとうもろこしでも観に行こうかしら」 私「どこの映画館に?」 田辺さん「いいえ。スーパーに。夏が終わっちゃうからね、食べとかないと」 夏が旬のとうもろこし。 夏の終わりに食べる最後のとうもろこし。 ラストとうもろこし。 田辺さんの感性が個性的なことは置いといて、私もなんで迷わず映画だと思ってしまったんだろう。 恥ずかしいから、誰か『ラストとうもろこし』って映画作ってくれないかな。 私「田辺さん、夏好きですもんね」 田辺さん「ええ」 私「でも、その割に夏は毎日暑がって文句言ってて、あんまり好きじゃなさそうですよ?しんどそう」 田辺さん「好きなんだけど、向いてはないのよ」
田辺さんってなんだかオラフみたいだな。 それは口には出さなかった。 私「じゃあ夏が終わるのは嫌ですか?」 田辺さん「別に。秋がくるし。栗に芋。秋は秋で暴れるよ」 それは何月まで半袖という情報より、よっぽど信憑性のある言葉だった。 こんな何気ない会話も立派な夏の思い出だな。 だったら、こんな会話は私たちの日常に数えきれないくらいあふれている。 私の夏への気持ちが今年変わりました。 それが冒頭にある変なポエムです。(あんり) 文/あんり(ぼる塾) イラスト/mame 構成/田中絵理子