ブラジル現地で活躍する日系企業の今 (25) 金属資源等を中心に躍進する双日ブラジル会社
ブラジル発の脱炭素社会プロジェクト
同社は脱炭素社会に向けて、今ブラジルでは二つの事業に注力している。 一つは、外国人筆頭株主となっている南米最大手の化学メーカーBraskem社と推進する、バイオマス由来のPET樹脂原料(ペットボトルなどが製造される)のグリーンMEG製造プロジェクトだ。従来のPET樹脂原料が石油だったのに対し、バイオマスを出発原料としているのが特徴で、現在販売を行っているグリーンポリエチレンに次ぐ製品。バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの。主に木材、生ごみ、ふん尿など。 尚、グリーンポリエチレンはサトウキビ由来のバイオエタノールから製造されサトウキビが成長過程で光合成によりCO2を吸収するため、製造フローで発生するCO2とのオフセット(CO2排出量の埋め合わせ)が実現でき環境にも優しい。Braskem社は世界でバイオケミカルのリーダーで今後更なる成長が見込まれている。 二つ目は、CBMM社及び東芝と3社で共同開発契約を締結したニオブチタン系酸化物を用いた次世代リチウムイオン電池の商業化である。金属元素の一つであるニオブは特に自動車向けの鋼材の軽量化・剛性化に不可欠とされており、CBMM社はニオブ市場において世界第1位(約80%)の生産量と販売量を誇り、高い技術力と製品開発プログラムを有している。高エネルギー密度で急速充電が可能な次世代リチウムイオン電池は、電気自動車などに適している。
ブラジルリスクを上回る魅力ある案件を
ブラジルでの駐在が今年で通算10年になる志田社長は、最初に赴任した1996年以前からブラジル鉄鉱石の業務に当たり、為替や金利の変動幅が大きく、物事が計画通りに進まないなどブラジル特有のリスクにも直面してきた。 しかし、日本にはないスケールの大きな国であり、「マイナス面を上回るだけの魅力ある案件」によってその潜在力を引き出せると考える。また、ブラジルの自然条件によって当たり前だった水力発電やバイオエタノールが、脱炭素社会の流れとなって急に脚光を浴びはじめるなど、「世界がどういう形態になってもビジネスチャンスを持つ懐の深さ」に大きな可能性を感じている。
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