即戦力が続々入社、ドンキはなぜ就職人気ランキング圏外でも人材に困らないのか
■ ドンキの35期連続増収増益を支えた「経営理念集の存在」 ――安田隆夫氏が発行したPPIHの企業理念集「源流」について、著書の中でもさまざまな形で紹介されています。従業員に読み込まれ、社内に浸透している背景にはどのような要因があるのでしょうか。 酒井 どの企業にも経営理念はありますが、経営理念を現場に浸透させようと日々努力している企業はまれです。その点、PPIHでは「源流推進本部」という組織を立ち上げて、現場の従業員にまで源流を浸透させようと、さまざまな取り組みをしています。 特に、幹部を目指すのであれば源流の中身を頭に入れて、自分なりに解釈して自分の言葉で語らなければなりません。実際に、サブマネージャー(課長代理)以上は、穴埋め式問題と論述試験の受験が必須となっています。論文では、自分が日々実践していることを源流の条文に重ね合わせ、自分なりの解釈を言葉に込める必要があるようです。 ドンキは現場に権限委譲しているからこそ、現場が経営理念を意識して行動しなければ事業成長にはつながりません。役員はもちろんのこと、店長やマネジメント職の誰もが経営理念を学び、実践することが求められます。 源流を現場に浸透させる上では、海外事業の現場が課題になっています。外国語を話せる人を優先的に現地に送り込み、言葉の壁を乗り越えて、どうにか現場に経営理念を根付かせようと試行錯誤しているようです。 ――本書を通じてドンキから学ぶべき点があるとしたら、何でしょうか。 酒井 ドンキは消費者にとって身近な存在であり、異端児でもある非常に興味深い企業です。マネジメントだけでなく、生きる上での学びやヒントをたくさん持っている企業でもあると思います。 本書はドンキの面白さを伝えるために、思い切って全面カラーにしています。特にドンキ独特の言葉や言い回し、私が取材していて印象的に感じた言葉は赤字にしているので、その部分を読んでいただくだけでも新たな発見があるはずです。
三上 佳大