即戦力が続々入社、ドンキはなぜ就職人気ランキング圏外でも人材に困らないのか
――支社間がフェアな競争関係にあるということですね。 酒井 厳しい競争環境をつくる以上、フェアでないと組織は崩壊してしまうので、前提として公正な評価が必要です。ドンキでは、ミリオンスター制度の立ち上げと同時に、現場の悩みや不満、要望などを「何でも聞いて、答えてあげる」という「アンサーマン制度」も開始しており、制度のひずみを正すための新組織「アンサーマン本部」がその制度を運用しています。ここにはドンキの取締役が名を連ねており、心理的安全性や透明性の確保にも力を入れていることが分かります。 ■ ドンキの仕事に「やりがい」を見いだす人が多い理由 ――ドンキでは「メイト」と呼ばれるアルバイトに、商品の仕入れや値付け、販促の権限を委譲しています。メイトの皆さんは何をモチベーションにしているのでしょうか。 酒井 一番大きいのは「やりがい」だと思います。多くのチェーンストアは、従業員が本社から命じられた仕事をこなすことを重要視していますが、ドンキにはそれがありません。自分で仕入れて、値付けをして、それが売れるという成功体験を積み重ねられるので、そこにやりがいを見いだす人が多いのです。 人間は誰しもが承認欲求を持っています。自分で考えて行動した結果、商品が売れる、感謝されるといった形で目に見えて返ってくる体験をアルバイトでも体験できるのが、ドンキで働く一番の醍醐味だと思います。 ――実際にメイトから正社員に登用される人も多いそうですね。 酒井 この規模の企業では珍しいことに、取締役や部長・室長クラスでも多くがメイト出身です。また、新卒社員の約3割がメイト経験を経て入社しています。就職人気ランキングにドンキの名前が見当たらなくても、高い志を持ったメイトが即戦力として入社するため、人材不足に頭を抱えることもありません。 モチベーションの高い現場と、「メイトが一番偉い」という考え方は、他社が模倣できないドンキの強みです。例えば、ドンキのプライベートブランド「情熱価格」の新商品が発売されても、メイトが店頭に商品を陳列しないという衝撃的な出来事がありました。 他の製造小売業であれば、本部が開発した商品を店頭に並べるのは当たり前でしょう。しかし、ドンキでは「いくら本部から売れと指示されても、この品質では売れない」「これならナショナルブランドを並べた方が良い」とメイトが判断するケースもあるから驚きです。