『シルエット・ロマンス』『スローモーション』『セカンド・ラブ』…女性歌手の表現力を覚醒させる来生きょうだいの楽曲 来生たかおの歌声は「優しく温かなグレーの彩り」
彼の声そのものがシルエットロマンス
来生さんは『白いラビリンス(迷い)』だけでなく、提供した数多くの曲をセルフカバーしてらっしゃるが、ほとんどが、セルフカバーというより違う曲に聴こえる。だから、南野陽子さんの『楽園のDoor』を聴いたあと、来生さんバージョンを聴いたり、薬師丸ひろ子さんの『セーラー服と機関銃』を聴いたあと、来生さんの『夢の途中』を聴いたりしたくなる。 彼女たちの瑞々しい表現力を光とするなら、来生さんバージョンは、ほんのりと影が重なった美しい物語。彼の声そのものがシルエットロマンスなのだ。 それは、印刷やパソコンで絶対に出力できない、優しく温かなグレーの彩り。 突然やって来た冬だが、来生たかおさんの曲があれば、秋が連れてくるはずだったロマンスが補充できる。 一日の終わり、お気に入りの布団にくるまりながら聞こう。 涙が出れば、そのままにしておこう。 ◆ライター・田中稲 1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。近著『なぜ、沢田研二は許されるのか』(実業之日本社刊)が好評発売中。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。
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