ランニング時に心拍数を深読みしすぎてるかも?心拍数ゾーンにこだわりすぎないほうが良い理由
心拍数ゾーンにこだわりすぎないほうが良い理由
心拍数ゾーンは便宜上設定されたものでしかありません。 悪くないアイデアかもしれませんが、最大心拍数の60~70%でAという効果が得られ、71~80%でそれとは違うBという効果が得られるという科学的知見に基づいているわけではありません。 そう言われても納得できない人は、ガジェットやアプリによってゾーンの定義がどう違うか確認してみてください。 Apple Watchでは 「ゾーン2 」は60~70%かもしれませんが、Pelotonでは65~75%です。ですからゾーンは便宜上設定されているだけのものです。 運動の効果に関する研究では、少なくともこの種の心拍数ゾーンは使いません。 換気閾値(運動中に会話ができるかどうか)や乳酸閾値(血液化学的に測定されますが、基本的に長時間維持できる最大の努力)を上回っているか下回っているかなど、いくつかの異なる方法で運動強度を測定します。 また、運動するために使うエネルギー量に関係するMETsを測定することもあります。 場合によっては、心拍数に基づいたガイドラインを被験者に送ることもありますが、その場合は型にはまった心拍数ゾーンではなく、上記の測定値に基づくものであることが多いでしょう。
ゾーン2とゾーン3の大部分が「会話できるペース」
ここで「トークテスト 」あるいは 「会話できるペース 」という考え方をもう少し詳しく見てみましょう。 簡単な有酸素運動を「おしゃべりできるペース」に保つというガイドラインは、 科学的な概念である換気閾値に由来します。 最初はウォーキングからはじめ、1分ごとに少しずつスピードを上げていくことを想像してみてください。 スピードを速めるに連れて、ある時点で正常な呼吸を保つことができなくなります。息が少し荒くなり、言葉が途切れ途切れになる時点が換気閾値です。 アスリートやコーチが「楽なペース」とか「無理のない努力」と言うときは、通常の換気閾値(VT)より下を望んでいます。ゾーン2だと、VTはゾーン2の一番上にくると思うかもしれません。 しかし、実は「会話できるペース」はゾーン3の上層に位置する「最大心拍数の割合が80%」に近いのです。 たとえば、勝敗にこだわらず楽しむことを目的とするレクリエーション・ランナーを対象とした研究では、VT1はランナーの最大心拍数の平均78%でした。 しかも、年齢による計算式ではなく、ランナーの最大心拍数をテストしています(デフォルトの計算式は信用しないほうが賢明です)。 つまり「楽(イージー)」なペースでトレーニングしようとする場合、あるいは80/20ルールを採用してランニングの80%を「楽」に保とうとする場合、イージーランや有酸素運動セッションはゾーン3だけでなく、ゾーン2とゾーン3でも行なえるということです。