「太く短く」でも「細く長く」でもなく「太く長く」生き抜くために――今永の球宴出場を支えた仲間たちと小さなハイテク武器<SLUGGER>
「日本と似たような気候だなと思ったんで、あんまり気にはならなかったですね」 今永昇太(カブス)がそう言ったのは、現地7月10日の水曜日、敵地ボルティモアで行われたオリオールズ戦で6回6安打無失点と好投し、チームの3連勝に貢献した夜のことだ。 【動画】強豪オリオールズ相手に6回無失点!今永昇太、前半戦最後の登板で8勝目 ボルティモア独特の高湿度で、エアコンのない記者席に座っているだけでも汗が吹き出るような環境下で、前半戦最後の先発マウンドに立った今永は、3試合連続のQS(6回以上3失点以下)以上の結果を残した。今永はこう続けた。 「すべてが初めての経験の中で、ある程度、危機管理をしながら、先回りして自分の技術とフィジカルの見直しができたのかなと思うので、これは投手コーチや監督の起用の仕方だったりとか、手厚いフォローを頂いたので、後半戦はもう一段階上げて、苦しいところも行けるように頑張りたい」 ピッチャーの登板過程のことを「Workload(仕事量)」などと言うが、今永はここまで、基本的には中5日の登板間隔で先発しながら、チーム事情とスケジュール上の都合で時には中4日でも登板してきた。具体的には中5日が10試合、中4日が3試合、中6日以上が4試合だ。 6月に入った頃、今永自身がこう言っていたのを思い出した。 「中4日の時は2日前、中5の時は3日前にブルペン(投球練習)に入るんです。中5の時はあえて、1日早めにブルペンやってるんですけど、あえて前倒しにすることによって、キャッチボールなり、ストレッチなり、モビリティ(・トレーニング)でズレを直せる期間を1日設けているんで、それは結構、違います。中4日から中5日になると、すごく長く感じるんで、全然違います」 チームのスケジュールや、他の投手の怪我や不調などによって、中4日と中5日で可変していく今の登板間隔を、今永は「メジャーリーグにいるんだから」という感じで受け止めている。もちろん、投手たるもの、それが先発だろうと救援だろうと、首脳陣から「投げられるか?」と言われれば、「Yes」と答えるものだ。 特に我慢強い日本人なら尚更だと思ったので、その辺りの違いを把握しているのか? とトミー・ホットビー投手コーチに尋ねると、「それはメジャーだって同じだよ」と笑った。 「特にチームにとって重要な局面だと分かる時は、どんな投手もチームを失望させたくない、と考えるものだ。大事なのは、他のスタッフも含めて、選手との関係をいかにして築いて、すべての情報をいつでも把握してるかどうかだ。昇太は自分に休みが必要な時とか、彼が今、どういう状態であるのかをしっかりと伝えてくれる」 ホットビー投手コーチや、選手の健康維持に欠かせない存在のトレーナーやストレングス・コーチらの命題はいつも、「選手に怪我をさせないこと」である。 それはある意味、成績よりも優先されると言ってもいいぐらいで、たとえば、今永が中5日で臨むことになっていた5月24日の敵地セントルイスでのカージナルス戦が雨天中止になった際、カブス首脳陣は今永を単純にスライドさせるのではなく、同29日の敵地ミルウォーキーでのブルワーズ戦まで登板を延期した。 今永は当時、いくらか疲労の蓄積を抱えていたそうで、その決断は「投手のコンディション維持」を優先したのだが、「結果」としては完全に裏目に出た。それまでデビューからの9先発で防御率0.84というメジャー史上最高記録(オープナーを除く)を残していたのに、中10日で臨んだブルワーズ戦では5回途中8安打7失点と大崩れしてしまったのだ。 その後、中5日で先発した6月4日のホワイトソックス戦では雨のために試合が中断し、5回途中69球(結果は7安打5失点/自責点1)で降板。ここでカブス首脳陣は、今度は中4日で敵地でのレッズ戦に今永を立てた。
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