「スーパー玉出」もダメージ! 苦境の激安スーパー"訳あり品"も高騰、大量閉店で価格死守も
「チョコ菓子は円安とカカオ豆の不作の影響で全般的に値が上がっていますが、売れ筋のキットカット大袋は各スーパーで特売の対象となりやすく、店の利幅がほとんどない198円で売られることが多かった。ネスレ日本は以前からこの安売りを嫌っており、どう頑張っても特売に踏み切れない水準まで価格を上げたわけです。業界では"キットカットの乱"と呼ばれています」 ■ネオンは消えても目玉は死守する玉出 大阪を代表する激安チェーン「スーパー玉出」も、あの手この手で物価高に立ち向かっている。22年末時点では38店舗を展開していたが、昨年、大阪市外を中心に大幅に閉店し、現在は26店舗だ。運営会社・フライフィッシュの工藤文子取締役はこう話す。 「創業地である大阪市西成区周辺に店舗を集約して物流の効率化を図り、収益を改善することが目的でした」 玉出といえば店内をド派手に彩るネオンライトだが、最近は店舗によっては電気代節約のために一部消灯。また、毎月「1」がつく日に1000円以上の買い物をすると、特定の対象商品を1円で購入できる名物イベント"1円セール"も、「以前は10品目程度が対象になっていましたが、今は毎回1、2品」(工藤氏)と、こちらも縮小傾向だ。 ただし、この物価高にあっても激安価格を死守している商品ジャンルがふたつある。 ひとつは玉出の目玉である総菜・弁当類。サバの味噌煮118円、オムソバ278円、5貫入りマグロ寿司328円など、インパクトは健在だ。 「これまでは各店で店内調理していましたが、生野区にある店の一部を改装して総菜・弁当のセントラルキッチンを新設。製造拠点を集約し、自社便で各店に配送することで製造コストが下がり、店頭価格を維持できています」 もうひとつが、カップ酒だ。西成区の労働者の町、通称"あいりん地区"にある天下茶屋店に行くと、コンビニや大手スーパーより2割程度安いカップ酒がズラリ。特に大関の「のものも」(180ml)は、"天下茶屋店だけの特別価格"として99円で販売されていた。 店の前でカップ酒を飲んでいた男性はこう話す。 「ココで酒と弁当を買うても500円以下。玉出はわしらにとっての"オアシス"や」 近隣の酒屋店主は「ありえない値づけ。メーカーとの間に特別な関係があるのでしょう」と指摘するが......。 「メーカーの担当者から、『天下茶屋店は「のものも」が日本一売れる店』と聞かされていますが、それ以上のことは企業秘密です」(工藤氏) 取材・文・撮影/興山英雄