《脳トレ博士と早口ことば芸人が考案》認知機能アップも!「早口ことば」に取り組むとなぜ脳の衰えを感じた人でもスラスラ言葉が出るようになるのか?
「あの人の顔は頭に思い浮かぶのに、名前が出てこない」、「会話の中で言葉が詰まってしまう」──こんな状況を打開できるのが「早口ことば」だと、脳トレ博士として知られる川島隆太・東北大学教授は言う。具体的にはどのようなものなのだろうか。川島教授と早口ことば芸人・作家の大谷健太さんの共著による『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。 【画像】前頭葉や側頭葉、脳の部位をわかりやすいイラストでチェックする
教えてくれた人
川島隆太さん 1959年千葉県生まれ。医学博士、東北大学加齢医学研究所教授。脳活動のしくみを研究する「脳機能イメージング」のパイオニア、脳機能開発研究の第一人者。2000万本以上を売り上げたニンテンドーDS用ソフト「脳を鍛える大人のDSトレーニング」シリーズの監修者。『新ときめき脳活パズル120日』(Gakken)『スマホが学力を破壊する』(集英社)など、著書、監修書多数。宮城県蔵王町観光大使も務める。
脳の働きは20歳をピークに下降線
「60歳を超えてから会話の中で言葉が出てこなくなり、人と話すのが怖くなりました」 まりさん(65歳女性)はこんな話を教えてくれました。最大の恐怖は同級生にもかかわらず、思い出そうとすると、顔は出てくるのに、名前が全然出てこなくなってしまったことだったといいます。 これは脳の情報処理能力の低下が原因です。「頭の回転力」とも言い換えられます。 そんな、まりさんが救いを求めるように取り組んだのが、「早口ことば」です。習慣化するようになって1カ月ほど経った頃、「あれ、あれ」という頻度が確実に減ったそうです。曰く、「頭の回転も速くなった気がします! 何より早口ことばを言える自分に自信が湧くので、どんどん人に話しかけてみようという意欲が出てきて、少し別人になった気分です」 これは脳の仕組み上、おかしなことではありません。というのも、「早口ことば」は脳の回転力を簡単に鍛える最良手段の一つで、「脳にとっての最高のごほうび」と言ってもいいからです。 脳の働きは20歳ごろをピークとして徐々に下降線をたどります。ですが、脳は何歳からでも鍛え直せるのです。 試しに次の「早口ことば」を言ってみてください。 「魔術師の頭上に数珠」 「まじゅつしのずじょうにじゅず」 こうした「早口ことば」などの簡単な文章を声に出して早く読むと脳が活発に働きます。速く読む努力をすると、前頭前野(思考や感情の制御や記憶の生成に係る)や側頭連合野(記憶の保持に係る)などが強く活性化します。脳の機能はコンピューターによく似ていて、優秀なコンピューターほど計算速度が素早かったり、たくさんの情報処理を同時にこなしたりできます。 「早口ことば」はコンピューターの計算速度を高めるように、頭の回転力を高める強い効果があります。音読と暗唱を繰り返すと、脳の記憶力(ワーキングメモリ)を鍛えることも可能なのです。 歳を重ねると、認知症を気にする人が増えてきますが、「早口ことば」を含む脳トレは認知機能を高める効果もあります。記憶力、滑舌の向上にも効きます。 冒頭でご紹介した、まりさんのように早口ことばに取り組んだ方々からはこんな体験談も寄せられています。