休業を経て復活した名宿「旅館万亭」へ。数寄屋造りの名建築と古湯に浸る
CREAがはじめてひとり温泉を特集して7年。当時は「女性がひとりで温泉なんて!」と驚きを持って受け止められたこのテーマも、いつしか珍しくない光景となりました。 【画像】館内には、先代館主が集めた骨董品や絵画作品が並ぶ。 好評発売中の「CREA」2024年秋号では、コロナ禍を経て、進化する“温泉地”を舞台に、めぐる旅を大特集しています。
磨きぬかれた復活の名宿へ
●旅館万亭[和歌山/白浜温泉] 万葉集に「牟婁温湯(むろのゆ)」や「紀温湯(きのゆ)」の名前で登場し、日本三古湯の一つとして知られる、白浜温泉。関西屈指の人気ビーチである白良浜を囲むように多くの宿が立ち並ぶこの地で、ひときわ存在感を放っているのが、「旅館万亭」だ。 大正時代に建てられた数寄屋造りのこの宿は、京都・祇園の老舗茶屋「一力茶屋」の別荘を数寄屋建築の巨匠である平田雅哉が改築し、開業したという物語を持つ。 老朽化により長らく休業していたが、再開を望む地元の人たちの熱い声に応え、満を持して2023年夏に再オープンした。 巨匠の美意識が息づく、粋で懐かしい空間はそのままに、より快適に過ごせるようにと客室などをアップデート。時を重ねてもなお美しい床やガラス、そして調度品からは日々の細やかな手入れと愛が感じられ、心が温かくなってくる。
日本ならではの美を見つける
また、館内におおらかに配されている骨董品と、格調高い建築の相性の良さを愛でるのも楽しいひとときだ。 窓の外に広がる青い海を眺めながら部屋でのんびりと過ごせば、谷崎潤一郎が著書『陰翳礼讃』で論じた、障子から差し込む間接的なやさしい光や、床の間の暗がりといったような、日本ならではの美を見つけることもできるだろう。 名建築、塩化物泉と硫黄泉が複合されたかけ流しの湯、見飽きることのない海、そして土地の恵みを味わえる食事。すべてを兼ね備えた空間にひとり、浸ろう。 旅館万亭 所在地 和歌山県西牟婁郡白浜町920-16 電話番号 0739-43-5005 ひとり料金 1泊2食付き22,950円~ ひとり対応 通年可 客室数 12室 食事 夕 食事処/朝 食事処 アクセス 熊野白浜リゾート空港よりタクシーで約10分、JR白浜駅よりバスで約15分 「めぐる旅」と「こもる旅」をテーマに47都道府県のひとりにいい温泉宿68軒、旅の目的地になるサウナと蒸し湯10軒など、最旬の温泉スポットを特集した「楽しいひとり温泉。」は、「CREA」2024年秋号でお読みいただけます。
高田真莉絵