ダンスは違いを超えて他者とつながるツール。誰もが自分の可能性を信じられる世界へ #豊かな未来を創る人
小さな目標達成が人を前に動かす
── これまでにない実績を次々と作ってきた背景で、挫折を経験されたことはなかったのでしょうか。 それがないんです。 ── ダンスを辞めたいと思った瞬間も...? ないです(笑)。ずっと楽しいですね。これまで、他のことは三日坊主で。ダンスに出合う前は、テニスやサッカー、ピアノ、水泳、いろいろやってみたんですけど、全部すぐ辞めました。でも、ダンスだけは続けてこられたんです。 挫折という挫折を感じてこなかったのは、家族から教わってきたことが大きかったのだと思います。私の場合、家族がいわばメンタルトレーナーのような存在でした。目標を達成するための考え方や心の持ち方などを、幼い頃からアドバイスしてくれていたんです。 私が家族からもらって、とても大事にしている言葉。それは「困難やスランプに陥ったときは、自分が前に進んでいる証だよ」という言葉です。仮に今、何か問題があるとすれば、それは目標に近づいているからこそぶつかっている壁。逆に問題がないことの方が、問題だと。その言葉がいつも心にあるからこそ、挫折した経験はないと思えるのかもしれません。
── 「挫折」といわれる事象は、目標に近づくための通過点にしか過ぎない。分かっていても、渦中にいるときにそのように思うことは難しい気もします。 そうかもしれませんね。でも、どのみち大きな目標に向けて進むのなら、目の前の事象を挫折だと捉えて立ち止まらずに、その過程を「楽しむ」。それだけは、自分の中で決めています。 それから、挫折しないようにもう一つ大切にしていることは、いかに小さな目標を確実にクリアしていくかです。これも家族から教わったことなんですが(笑)。私の場合は「ダンサーの社会的地位を向上させる」という大きな目標がまずあって、その下にそれを叶えるための目標を細かく書いていくんです。そしてさらにそれらを叶えるための目標をどんどん書いていく。そうやって、常に目標を分解するようにしています。 このときに、目標は小さくできればできるほど良い。どんなにくだらないことでも、私は毎日たくさんメモに書き出して、それを全部実行するようにしています。紙に書いたものを、家の壁に貼ったりもしていますね。 ── 最近壁に貼ったのは? 「ウエストと足」という言葉です(笑)。ダンスにおける差別化というか、自分にしかできないことを考えたときに、私は身長が高い方なので、ウエストや足のシルエットをもう少し活かせるのではと。それで、家でトレーニングをするようになりました。 人によっては「今日の夜、カレーを食べる!」とか、そういうことでも良いと思うんです。毎日自分で決めたことを実行できると、人ってどんどん幸せになっていく気がします。一歩目のハードル設定を低くすることで、「できた」「嬉しい」という小さな達成感がどんどん生まれていく。それが、人を前に動かす原動力になると信じています。