「反戦平和」を訴え続けた画家・詩人 四國五郎の「記憶を継承」する パギやんの一人芝居全国巡業中
■反戦平和の詩画家・四國五郎の「母子像」 直登さんの日記が大学ノートに残っていて、それをとても大切にしてきた五郎さんは、もともと優しい絵を描く方ですが、その中に怒りを感じる絵も少なくありません。『おこりじぞう』の絵もはじめは優しいんですが、途中からトーンが変わっています。今でも読まれているベストセラーです。 軍国少年だった五郎さんは、自分が戦争に行ったのに生き残り、一方で故郷にいた弟が被爆で死んでしまうということに苦しんでいたわけですが、戦争の記憶をきちんと伝えていくために絵を描く、と心を決めました。 五郎の独白: 弟よ わたしはいまベトナムの母子像を描いている。幼い息子を抱き、娘をひきよせ、怒りと決意に光る瞳をもつベトナムの母子像を描いている。おまえを奪ったものへの憎しみと怒りをわたしはこの母子像にぬりこめる。侵略者にたいする勝利の確信にみちみちた母子像を!そして、なによりもまず母子を解きはなちがたく結び合わせている愛を、ひと筆ひと筆ぬりこめる。弟よ、おまえが死んでから二十年、書き続けている母子像の、その絵具の重なりの中に、私はおまえの日記の一行一行をぬりこめる。 五郎の独白: 人間のさまざまなつながりの中で最も根源的なものである、母と子のつながりを断ち切ろうとするものへの怒りと、決してそれを許さない母子の愛情をわたしは絵のテーマとして選んだ。おまえの日記帳がわたしにそれをさせた。母子の喜びの姿も、悲しみや怒りの姿も、原水爆と切りはなしては描けない。 五郎の独白: 弟よ、おまえが日記の中から話しかけてくること、おまえの怒りと悲しみがわたしの絵にどれだけぬりこめられている。見ていてくれるか。 弟よ おのおののしあわせが、おのおのの生活が、おのおのの生命が、おのおのの祖国が、いかなるものにもおびやかされず、はずかしめられることのないために、そのためにわたしは母子像を描き続けよう。 ■『四國五郎と弟・直登』の全国巡業 五郎さんは様々な母子像を描いています。ベトナム戦争があったこともあり、ベトナムの母子像も描きました。確かに一番根源的な人間の繋がり、愛情なのかもしれない。それを描いていく五郎さんの絵は本当にすばらしいな、と今回じっくり見て思いました。