ヘッドレストの穴は何のためにあったの!? どうして絶滅した!??
クルマのシートの背もたれの上部に装備されているヘッドレスト。「ヘッドレスト」とは、英語の「ヘッド・レストレイント(head restraint)」を略したもので、直訳すると「頭の拘束」。追突事故の際に、乗員の頭部が後ろへ投げ出されるのを最小限に食い止めてくれる安全装備のひとつです。 【画像ギャラリー】日本車で初めてアクティブヘッドレストを採用した、日産「シーマ」(8枚) 昨今のヘッドレストは、シート一体型になっていたりなど、厚みがありどっしりとしたタイプが主流ですが、かつてのヘッドレストには、中央に穴が開いていたり、なかには全体がメッシュになっているタイプもありました。あのヘッドレストの「穴」は何のためにあったのか、そしてなぜ廃れていったのでしょうか。 文:吉川賢一/写真:HONDA、NISSAN、内閣府
真ん中を空洞にすることで、後席を明るく開放的にしようとしていた
かつてのヘッドレストに穴が開けられていたのは、後席の居住性改善のため、というのが主な理由です。後席は、前席のシートバックによって前方の視認性がよくなく、光も遮られてしまうため、どうしても開放感に欠けてしまいます。そこで、頭を支えるために必要な部分を残して真ん中を空洞にすることで、後席スペースを明るく開放的にしようと登場したのが、穴あきヘッドレストでした。 日本では、1980年代後半から採用され始め、コンパクトカーからセダンまで、幅広い車種で採用されました。しかしながら、2000年代に入るころには、穴あきヘッドレストはみられなくなっていきます。
安全装備として進化するなかで、穴あきでは対応できなくなった
ヘッドレストは、正式には「頭部後傾抑止装置」といい、冒頭でも触れたように、追突事故の際に乗員の頭が振られてしまうことから守るためのもの。クルマに乗っていて後ろから追突されると、乗員の体はいったん前方へと投げ出され、その後シートベルトによって身体は後方へと戻されます。このとき、頭部が後ろへ投げ出されるのを最小限に食い止めてくれるのがヘッドレストです。 「レスト=休息」という響きから枕のようなイメージをもっている人は少なくないようですが、快適装備ではなく、道路運送車両の保安基準第22条4号によって運転席、及びこれと並列の座席(助手席)に備えなければならないとされている、安全装備です。 クルマの安全装備が年々進化してきたなかで、ヘッドレストも、よりむち打ち症状となることを防ぐ、もしくは症状を軽くするために進化をしてきた結果、穴を設けたりメッシュ状のヘッドレストでは対応が難しいとして、廃れていったのでしょう。また、昨今のクルマのヘッドレストは、「アクティブヘッドレスト」という、追突事故が生じた際にヘッドレストを前傾させて頭が振られてしまうことをより防止してくれる装置を採用している例も多く、こうした構造を取り入れるため、穴あきでは十分に対応できなくなったのです。