歴史的名建築を支える「白い貴婦人」 茨城・笠間市「石切山脈」 探訪
東京駅に日本橋、最高裁判所-。全国有数の建築物に使われている石材を産出している日本最大級の採石場を訪ねた。 【写真】東京駅丸の内中央口と皇居をつなぐ、行幸通りに敷き詰められた「稲田石」は多くの人を魅了している 明治32年から続く、茨城県笠間市の通称「石切山脈」。のどかな山間部に採石跡が刻まれた白い岩壁が古代の神殿のようにそそり立ち、湖面に鏡映しになっている。東西約10キロ、南北約5キロ、地下約1・5キロにおよび岩石帯が広がる。 採れる白御影石「稲田石」は約6000万年前に海底深くで冷えて固まった「花崗(かこう)岩」の一種だ。ここの石は特に品質が良く、光沢感や耐久性が高く評価されている。雪のように美しい石肌は「白い貴婦人」とも呼ばれ、国内の歴史的建造物の建築材料となってきた。国会議事堂建設の際には、約350人の職人たちが汗を流したという。 石切山脈で、125年前から石材会社を営む「想石」の川畑真彦社長(56)は「純白の稲田石が持つ素晴らしさは世界でも類を見ない。今は大きな建設事業で使うことは少なくなったが、神社や寺、墓石に生かされ、多くの人を魅了し続けている」と話す。現在も職人が採掘作業を行い、年間約5000トンの石材を出荷している。 石切山脈の取材を終え、東京駅に足を運んでみた。真っ白な稲田石が敷き詰められた皇居へと延びる行幸通りを、多くの人が行き来している。晩夏の太陽をいっぱいに受けて輝く「白い貴婦人」は、今年開業110周年を迎える赤レンガ駅舎を高貴に際立たせていた。 (写真報道局 関勝行)