「闇バイト加担で中学生逮捕」の衝撃。我が子が闇バイトに手を染めないよう、親にできる対策は
私たち親世代は、子どものデジタル機器の付き合い方や、ITリテラシーの教え方にどう向き合ったらよいのでしょうか? ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザーとして活躍し、自身も二児の母である鈴木朋子さんに教えてもらいます。今回は、もはや他人事では済まされないほど身近に迫る「子どもの闇バイト」について聞きました。 【画像】Signalの画面。このやり取りは30秒でメッセージが消える設定になっている ■中学生が逮捕されたケースも……「闇バイト」の実態 自分専用のスマホを持つ時期が低年齢化し、小学生でもスマホを持つ時代になりました。子どもたちが無防備にネットを利用することにより、深刻な事態を引き起こすこともあります。 2023年、千葉県市原市に住む中学生の少女がSNSで闇バイトを検索し、特殊詐欺の現金を引き出す「出し子」の仕事を引き受け、窃盗容疑で逮捕されました。(※1) さらに2024年に入っても茨城県の男子中学生など、関東に住む少年3人が強盗予備容疑で逮捕されています。彼らもSNSなどで闇バイトに応募し、山口県光市の住宅に強盗に入る機会をうかがっていました。(※2) このように、特殊詐欺や強盗など、犯罪の実行役として中学生が加担してしまう事案が発生しています。また、犯罪の実行役だけでなく、闇バイトを勧誘する仕事を請け負った熊本市の16歳少年も逮捕されています。(※3) 今となってはSNSでアルバイトを探すことは珍しくありません。通常のアルバイト募集もInstagramなどに数多く投稿されています。その一方で、そうした一般的なアルバイト募集にまざって闇バイト募集も行われています。 Xで「高額バイト」「即日現金」などのキーワードを検索すると、「DMで連絡」するように記載されている投稿がヒットします。SNS以外でも、求人サイトや掲示板などに闇バイト募集と思われる求人が書き込まれていることもあります。中学生や高校生が楽にお小遣い稼ぎをしたいと考え、こうした求人に興味を持ってしまうのです。 闇バイトに応募してしまうと、「Telegram(テレグラム)」や「Signal(シグナル)」などの秘匿性の高いメッセージアプリを入れるように言われます。これらのアプリは通信が暗号化されるため、第三者が内容を傍受することができません。また、相手がメッセージを読んだら、自動でメッセージを消去する設定も可能です。 ■子どもを闇バイトから守る4つの対策 メッセージアプリを入れると、バイトを始めるにあたって必要な情報として、名前、生年月日、学校名のほか、マイナンバーカードや学生証といった顔写真入り身分証明書、家族の名前、家族の勤務先などを送るように求められます。この手続きにより、いざ仕事の案件が来て「これは闇バイトかもしれない」と気づいても、「自宅に行くぞ」「親の会社に言うぞ」というように脅され、辞められなくなるのです。 我が子が闇バイトに応募することはない、と思っている方は少なくないでしょうが、「もしも」のために備えておくと安心です。特殊詐欺の「受け子」や「出し子」は、地元の先輩や友人などから誘われるケースも多いのです。知り合いから誘われると、断りにくく感じてしまう子もいるかもしれません。 では、親はどのように子どもを守ればいいのでしょうか。 対策1:アプリのインストールを許可制にする まず、「フィルタリング」と「ペアレンタルコントロール」の設定は必須です。「フィルタリング」と「ペアレンタルコントロール」を子どものスマホに設定しておくと、アプリのインストールを許可制にできます。TelegramやSingalなどのアプリを入れたいと申請があったら、その時点で止めることができます。 「フィルタリング」と「ペアレンタルコントロール」は、小学生や中学生でスマホを持ち始めたときに設定することがおすすめですが、すでにスマホを持っている場合でも設定しておくと安心です。アプリのインストールだけでなく、アプリの利用時間も把握できます。 もし何かのトラブルに巻き込まれている場合、特定のアプリの利用時間が増えたり、いつもとは違う時間帯に利用するなど、異変が起きる可能性があります。早めに気づいて声を掛けられると、事態が大きくならずに済みますね。 対策2:闇バイトについて説明、相談先も伝える 闇バイトとは何か、どのような流れで犯罪に加担させられるのかなど、闇バイトについての基礎知識を話しておくことも大切です。 そしてもし闇バイトに関わりそうになったら、「早めに大人に相談する」ように繰り返し伝えておきましょう。闇バイトの指示役は子どもや家族を脅してくるかもしれませんが、警察に相談すれば対応してくれます。実際に、闇バイトに応募してしまった人や家族を警察が保護した事例もあります。 相談先は、警察相談ダイヤル#9110、または近くの警察署です。24時間受け付けている「ヤング・テレホン・コーナー」(警視庁少年育成課少年相談係 03-3580-4970)は、20歳未満の人向けですが、家族からの相談も受け付けています。 対策3:闇バイト募集を見抜くクイズにチャレンジ 闇バイトに応募しないように、あらかじめ学んでおくことも大切です。東京都の「特殊詐欺加害防止特設サイト」には、危険な求人情報を見抜くクイズが掲載されています。 闇バイトは特殊詐欺から強盗まで広がっていますが、怪しい求人を見抜ければ、犯罪に加担せずに済みます。ぜひ親子でクイズにチャレンジしてみてください。 対策4:「うまい儲け話」に警戒させる そして、闇バイトに限らず、「うまい儲け話はない」と説明しておきましょう。闇バイト以外にも、ネットには「お金を配ります」「中学生でも副業ができます」など、怪しい誘惑があふれています。SNSで「コンサートチケットを譲る」と言う人にお金だけ取られてしまう詐欺も横行しています。 残念ながら世の中には悪人もたくさんいて、相手を利用してやろうという人が「おいしい」話をばらまいています。お金が関わることは必ず親に相談するよう、常日頃から話しておくといいですね。 (文:鈴木朋子、編集:マイナビ子育て編集部)