毎日“6時間睡眠”の人は「酔っ払いながら仕事をしているのと同じ」って…!ノーベル賞有力候補の睡眠学者が憂う、日本社会の「深刻な睡眠不足」
日本人は世界で一番眠っていない
睡眠は、謎が多い。人間はなぜ眠るか。睡眠中に何が起こっているのか。これらの問いは、いまだ正確に解明されていない。 【一覧】クスリとサプリ「危ない飲み合わせ」がこんなにたくさん… しかし、そんな“聖域”に挑み続ける世界的な研究者がいる。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 機構長の柳沢正史教授だ。ノーベル賞の有力候補とも言われており、睡眠学の分野においてその存在を知らない人はまずいない。 功績のひとつが、1990年代後半の「オレキシン」の発見だ。眠気の制御に関わるこの神経伝達物は、「デエビゴ」と「ベルソムラ」といった新たな睡眠薬の誕生に大きく貢献した。これらは従来の睡眠薬と作用機序が異なり、依存性がまったくない。iPS細胞を発見した京都大学の山中伸弥教授も時差ボケ対策に使用しているほどだ。 「睡眠は、私たち人間に与えられたギフトです」と柳沢教授は断言する。 「すべての哺乳類の中で、人間だけが長く深く続けて眠ることができる。極端な単相性睡眠なのです。あくまでひとつの学説ですが、人間に特徴的なこの深く連続した睡眠が、私たちと他の霊長類を隔てたとも言われています。睡眠は、私たちの脳の発達に大きく関係しているのです」(以下、「」内は柳沢教授) ところが、日本の睡眠状況は最悪だ。OECDの調査によると、日本の平均睡眠時間は7時間22分で、OECDに加盟する33ヵ国の中で最下位。各国平均の8時間25分よりも、1時間短い。 「日本の睡眠時間の短さは完全に社会的なものです。人種的・地理的な理由では決してない。働き方改革が進んでいるとはいえ、いまだに日本では睡眠を犠牲にした長時間労働が美徳とされている。要するに、アウトプットを評価する制度が根付いていないことが大きな要因です」 現在、睡眠の謎解きは少しずつ進んでいる。昨今の研究では、「6時間未満の睡眠」でも、脳の認知機能を低下させることが明らかになっている。厚労省の調査によれば、睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性 が37.5%、女性 が40.6%。いずれも4割近い。