南海トラフ震源、AIで「誤差数キロ」まで迅速に推定…津波の高さ・到達時間など予測精度向上へ
「防災力」押し上げに期待
東日本大震災の発生当初、気象庁は最大で高さ6メートルの津波を予想する大津波警報を発表したが、実際は予想を大幅に超える地域が相次いだ。正確に予測できなかったのは、地震の規模を過小評価したのが主な原因で、震源の深さの誤差も14キロ・メートルあった。
正確な予測は住民の命に直結する。南海トラフ地震を巡っては、想定震源域で整備されてきた海底観測網が年内に完成予定で、今回のシステムが実用化されれば、新たな観測データとの相乗効果も期待できる。
海洋研究開発機構は、他の地震での震源地推定にも役立てようと、関東~東北沖の日本海溝を対象にした3次元モデルの作成を進めている。京都大の山田真澄・准教授(地震学)は「3次元モデルは地下の活動を詳しく分析できるため、地震の発生メカニズムの理解にもつながるだろう」と指摘。日本の防災力を大きく押し上げる成果を望みたい。(大阪科学医療部 松田俊輔)
◆南海トラフ地震=静岡県沖から宮崎県沖に延びる南海トラフを震源とする地震。約100~150年間隔で繰り返し起きており、政府の地震調査委員会によると、今後30年以内の発生確率は70~80%。死者・行方不明者は最大約23万1000人と想定されている。