株価との相関が低いアジア債券に注目、現在の利回りは過去最高レベルの水準
米国株価が再び史上最高値更新に迫っている。NYダウは7月17日に付けた終値ベースの史上最高値4万1198ドルに後0.75%に迫り、S&P500も7月16日の高値まで0.82%だ。ただ、高値圏にある株価の変動率は大きい。この8月の下落では、3週間程度でNYダウは最高値から6.06%安の水準に下げ、S&P500も8.49%安になった。主要株価指数の中で最も下落率が大きかったNASDAQ総合指数は13.15%安と短期間に2ケタを超える下落率になった。米国に景気後退(リセッション)懸念が出ていることもあり、今後もこのような大きな下落局面は覚悟しておく必要がある。このような株価の動きが激しい折には、株価の動きとは連動性の低い資産を保有することで資産価値の変動リスクを抑えることを考えたい。その組み合わせ先の候補として「金(ゴールド)」は有力な資産だが、もうひとつ、「アジア債券」にも注目したい。イーストスプリング・インベストメンツは8月21日にアジア債券の魅力を伝えるレポートを発行している。
アジア債券というと1997年~98年のアジア金融危機を思い起こしてリスクが大きな資産という印象を持っている人が少なくないかもしれない。しかし、イーストスプリングのレポートは、アジアの現地通貨建て債券市場は、約25.2兆米ドルの規模に達し、2023年で米国の67%、欧州の112%の水準にあるとする。アジア金融危機以降、同地域の金融システムのレジリエンス(強じん性)と健全性を改善する取り組みに多大な努力がはらわれてきた結果だ。
アジア金融危機の当時から30年にわたってアジア地域での投資を行ってきたイーストスプリング・シンガポールの債券運用部門の責任者であるDanny Tan氏は「(アジア債券市場の)成長は、主の国債によってけん引されてきたものの、社債のシェアが時間とともに増加している」と指摘する。そして、「“退職後の貯蓄”の規模が拡大するにつれて、債券市場の厚みと流動性が向上する」と強調している。