評価高まるアルゼンチンワイン、評論家が満点をつけた「マルベック」の1本とは
■標高が最も高かったブドウ畑 かつては荒野
ヴィレッジセラーズが輸入するブランド「ボデガ・コロメ」はサルタに複数の畑を持ち、最も標高の高い畑「アルトゥーラ・マクシマ」は海抜3111メートル。2018年に中国のチベット自治区ラサにある3563メートルの畑がギネスによって世界一高いブドウ畑に認定されるまでは、世界一高いブドウ畑だった。中村さんによると、アルトゥーラ・マクシマの隣は断崖絶壁になっていて、畑の周りにはサボテンが生え、リャマが歩いているという。 ボデガ・コロメの「エステート・マルベック 2021」(税別希望小売価格3500円)を試飲した。ブドウは海抜2300メートルの畑のものを60%、同2700メートルのものを25%、同1700メートルのものを5%、そしてアルトゥーラ・マクシマを10%ブレンドしている。ブレンドするのは香りや味わいに複雑性や深みを持たせるためだ。 ワインは深いルビー色で、果実味が非常に豊か。アルコール度数は14.9%と高くフルボディーだが、しなやかな酸味と熟したタンニンのおかげで味わいのバランスがよく、高貴な雰囲気を醸し出している。これでもボデガ・コロメのラインアップの中では最も低価格帯。さらにこの上のクラスを飲んでみたいと思わせるワインだ。 マルベックがアルゼンチンを代表する赤ワインとすれば、白ワインの代表はトロンテス。アルゼンチン固有の品種で、鼻をグラスにちょっと近づけただけでわかる華やかな香りが特徴だ。海抜1700メートルの畑のブドウを醸したボデガ・コロメの「エステート・トロンテス 2022」(同2000円)は凝縮したフルーツミックスのような香りと花束をイメージさせるような華やかな香りが素晴らしく、酸味と余韻のほのかな苦みが、バランスと高級感をもたらしている。コスパも非常に優れている。 アルゼンチンワインは米国や英国など欧州では人気だが、日本での知名度はいま一つ。過小評価されている産地の一つだ。 文:猪瀬聖(ワインジャーナリスト)
猪瀬聖
WSET認定Diploma(DipWSET)。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート/Sake Diploma。チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル。著書『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。元日本経済新聞社ロサンゼルス支局長。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。