卓球が「年齢問わず活躍できるスポーツ」である理由。皇帝ティモ・ボル引退に思う、特殊な競技の持つ価値
卓球は「キッズが強い」。そして「高齢でも強い」
キッズ選手が頭角を現すと、「天才少年、天才少女現る!」といったキャッチーな見出しが躍る。次々と世界の舞台でも結果を出すことができる若い選手が登場することも卓球の魅力の一つ。 一方で、日本では年代別に、30歳以上の部、60歳以上の部など、「マスターズの部」という枠が用意されている。このことからもわかる通り、卓球は年齢を重ねても楽しめる場がある競技だ。 やはり卓球は、筋力も必要とはいえ「パワーだけで捻じ伏せる」ということは難しい。他の球技と比べてもその傾向が強く、野球、サッカー、バレーなど、重いボールを扱う競技に比べると、はるかに「筋力が足りないキッズやベテランがトップクラスで活躍できるスポーツ」だ。 加えて、試合中ずっと走り続ける体力を必要とする競技、例えばサッカーなどでは、40代が20代と運動量で渡り合うのは、かなり厳しくなるだろう。当然のことだ。 そういった面でも卓球の場合「30代、40代のトップアスリート」という可能性は十分に見いだせる。 日本では16歳の張本美和の活躍が目立った2024年。同様に、43歳のティモ・ボルも世界の最前線で活躍できてしまう。それが卓球という競技なのだ。
目標なんてなくても、年齢を問わず楽しめる、卓球という競技
パリ五輪に最年長選手として出場した、ルクセンブルクの61歳の女性卓球選手シャリャン・ニが、トルコ代表選手に勝利して、オリンピックの「最年長勝利・世界ギネス記録」に認定された。 2021年(58歳時)には、世界選手権の女子ダブルスで銅メダルまで獲得している「スーパーおばあちゃん」の愛称で親しまれる選手だ。これまで6度のオリンピックに出場を果たした彼女は、4年後のロサンゼルス五輪にも「挑戦する可能性はある」と熱意を燃やしており、世界中の卓球競技者、卓球ファンに夢を与える存在だ。 ティモ・ボルも、国際大会の第一線からは身を引くことになるが、これから卓球の存在意義を後継者たちに伝えていく、大きな仕事が待っているだろう。ボルにしかできないことや、ボルにしか伝えられない経験は、きっと山ほどあるはずだ。 仮に「壮大な目標」などなくても楽しむことができる。10回ラリーを続けること。そのくらいのことで、今すぐ盛り上がれるのも卓球の良いところ。孫とおじいちゃん・おばあちゃんで楽しむことだって可能なのである。こういうスポーツは他になかなかないかもしれない。 今日も各地の体育館に、人気の卓球スポットに、あるいは温泉宿の卓球台に、人々が集い、老若男女がラリーにいそしんでいる。軽々なラリーの音、ポコンポコンという初心者の打つ音、さまざまなリズムが、それぞれのペースで鳴り響く。全世代が楽しめるスポーツは、きっと平和の象徴の一つだ。 卓球。この競技には、他のスポーツにはない、確かな存在意義がある。 <了>
文=本島修司