令和でもその「厳しさ」は通用した…38年ぶり阪神日本一を成し遂げた名将・岡田彰布「マネジメント」の極意
2024年の日本シリーズでは、横浜DeNAベイスターズが福岡ソフトバンクホークスを4勝2敗で下し、26年ぶりの日本一の栄冠を手にした。その一方で、今年は阪神、中日、楽天、オリックス、西武の5球団の監督交代が発表されている(※11月25日現在)。 【一覧】プロ野球「最も愛された監督ランキング30」最下位は、まさかの… 球界を盛り上げた監督たちに敬意を表しつつ、彼らの功績や苦悩について、ライターの長谷川晶一さん、村瀬秀信さんに振り返ってもらった。 【前編はこちら】『あまりに不運だった西武・松井稼頭央「王道キャリア」での監督就任だったはずが…スーパースターの「悲しき去り際」』
時代の流れに沿わない「厳しさ」で日本一を実現
長谷川:第3回は、2023年に38年ぶり2度目の日本一を成し遂げた阪神の岡田彰布監督を取り上げましょう。今季退任する監督のなかでも、岡田さんが辞められるというのが一番ショックでした。 ぼくにはひとつ、監督に関する持論があるんです。それは、チームを日本一にするのは「外様の厳しい監督」、もしくは「生え抜きの優しい監督」というもの。ヤクルトの歴代優勝監督を顧みると、広岡達朗、野村克也という外様の厳しい監督か、もしくは若松勉、真中満、高津臣吾という生え抜きの穏健な監督で優勝してきているんです。 理想としているのは「生え抜きの厳しい監督」なんですけど、今までヤクルトにはいない。その貴重な存在が岡田さんだったんです。 村瀬:阪神で2005年シーズンにリーグ優勝を果たし、2010年からはオリックスでも監督を務めたけどこちらはイマイチだった。12球団最高齢で、酸いも甘いも経験したなかで満を持して阪神に戻ってきて、一次政権では叶えられなかった日本一の雪辱を果たしました。 長谷川:岡田さんのやり方が成功したことで、令和でもこの“厳しさ”は通用するんだという一つの証明になった。何でもかんでも優しくまろやかに、という時代の流れに対するアンチテーゼとして、すごいなと思って見ていたんです。成績は好調なのに、こちらがそこまで言わなくてもいいんじゃない?と感じるくらい、サトテル(佐藤輝明選手)らに対して辛辣な言葉を投げる。ちょっとした慢心を指摘しているんだよね。 村瀬:あと、本人に直接言えばいいと思うようなことも、岡田さんはマスコミを通じて言うんですよ(笑) マスコミの使い方をよく分かっていますよね。 長谷川:今年は結果的に連覇とはならなかったけど、リーグ2位。CS第1ステージの敗退後、最後のインタビューでも、選手たちに対して「結局あいつらは怒るやつがいなきゃダメなんだ」みたいな言葉を残して去っていくというね(笑) いやー、もう一年見たかったなと思いましたね。いまの12球団の監督の中ではちょっと異質なんでね。 村瀬:今年の野球界において、名将と呼ばれるうちのお一人だと思いますね。それまでの阪神に流れていた緩い空気を一変させました。来年もやりたいという気持ちはあったのかもしれませんが、67歳という年齢ですし、体調もすぐれないということで難しいというところでしょうか。