【対談】アクションを撮り続ける映画監督・阪元裕吾×ホラーを作り続けるテレ東P・大森時生「人間のリアルを描こうとしたら、ホラーやアクションになった」
阪元 取り憑かれてるんかな(笑)。 大森 本当に微妙なジャンルの話なんですけど、僕はホラーってよりも、うっすら不気味なものとか奇妙なものが好きなんですよね。もし可能なら、フェイクじゃない不気味なドキュメンタリーを撮りたいですし。まだ自分の技量が足りていないんですけど。 阪元 なるほど。 大森 さっきの演劇の話でも、本当に社会に問題意識がある高校生っていうより、審査員の考えることを内面化してやった結果、テーマを社会問題にしているわけじゃないですか。そういう、大きな存在を想像した結果、それを代弁してその人もそういう行動する、みたいな。そういうリアルな人間が無意識に取ってる奇妙な行動とかに惹(ひ)かれます。 阪元 あー、面白いですね。 大森 自分が高校生だった頃を思い出すと、いろいろな社会問題に対して実際の問題意識はなかった気がしていて。 阪元 それを作品に昇華するなんてこの年齢でもできないですよね。それなのに完璧な脚本を、完璧に高校生たちが演じさせられてる状況って確かに不気味ですね。 ――阪元さんは殺し屋をテーマにした作品が多いです。 阪元 実はバイオレンスじゃない作品も1本だけ撮っていて、音楽の話なんですけど。ただ、僕としては音楽もアクションっちゃアクションよなって思うんですよね。 言っちゃえばダンスも歌も、役者の身体能力じゃないすか。ジャッキー・チェンやブルース・リーは、バスター・キートンやチャップリンとかとそう遠くないというか。 大森 アクションっていうか「人間の身体性」に興味があるって感じなんすかね。 阪元 そうですね。あと、さっきの逆張りの話になっちゃいますけど、日常との対比を一番作れるのがアクションなんですよね。『ベビわる』もダラダラしてる女性がピストルを持ってたらおもろいなあみたいな。 大森 『ベビわる』の魅力のひとつは主人公ふたりのリアリティあふれる日常会話ですし、ジャンルに取り憑かれたというより、人間のリアルを描こうとしたら、結果的にホラーやアクションになったって感じなんですかね? 阪元 そうですね。ただ、劇場公開中の3作目は明らかに日常が少なくてアクションばっかりやってます。いろんな場所行って戦ってしかいないので、ホンマにバランスの悪い映画になっちゃって......。ドラマ版でもファンが喜ぶような主人公ふたりのやりとりよりも、全然関係ないパワハラしまくるシーンとか入れたし......。 大森 やりたいことを貫きまくっていて面白いです(笑)。 ●阪元裕吾 Yugo SAKAMOTO 1996年生まれ、京都府出身。『ファミリー☆ウォーズ』(18年)で商業デビュー後、『ある用務員』(20年)、『黄龍の村』『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』『ベイビーわるきゅーれ』(すべて21年)、『グリーンバレット』(22年)を発表 ●大森時生 Tokio OMORI 1995年生まれ、東京都出身。2019年にテレビ東京へ入社。『このテープもってないですか?』『SIX HACK』『祓除』『TXQ FICTION/イシナガキクエを探しています』などを担当。2023年にForbes JAPAN 30 UNDER 30に選出 撮影/鈴木大喜