神楽坂の新たなスペース〈PAAMA〉が韓国のアーティスト、イ・カンホの展示で幕開けしました。
アートディレクターの前田晃伸が、神楽坂の新たな事務所に〈PAAMA(パアマ)〉なるスペースをオープン。韓国のデザイナー・アーティスト、イ・カンホによる柿落としとなる個展が開催中です。 【フォトギャラリーを見る】 さまざまな雑誌のアートディレクターなどを務める前田晃伸が、神楽坂に自身の事務所とギャラリーを併設したスペース〈PAAMA(パアマ)〉をオープンした。その名は和製英語の美容技術、パアマに由来する。髪型を変えることでスタイルや気分を変える技術をポジティブに捉え、スペースも文化や領域の垣根を自在に超える有り様を目指すという。集合住宅の1階にあり、内装は空間デザイナーの関祐介が手がけた。 最初の展示は世界各地で作品を発表する韓国のデザイナー・アーティスト、イ・カンホ。韓国のデザインシーンを代表する存在でありながら、独自の表現を行う作家だ。日用雑貨や住宅設備などを販売するホームセンターに並ぶような日常的な素材を用い、それらを自身の手で編み込む作品がよく知られる。
本展は《オブセッション》、つまり執着と名づけられた。作品設置を終えたばかりのカンホに意味を尋ねると、「活動初期に、私自身の制作を一言で表すとしたらどんな言葉になるだろうと考えたうえで発見した言葉を展示のテーマとしました」と答える。 「今回は色や形に捕らわれず、執着を目に見える形で表現しようと意識しました。これまでも違う色の同素材を組み合わせることはありましたが、異素材を一つの作品に盛り込むのは新たな表現です。制作過程のなかで、それぞれの素材が際立って見えることを意識しました。今回は計画やスケッチもなく、素材が持つエネルギーを感じながら、手の動くままに制作を進めました。そして、素材の感情に自分の手がついていくことで、作品が生まれていきました。手を動かしながら頭でも形をイメージするのですが、結果として作る人に似るようにも思います。ですから私自身が表現された部分もあり、私の身体から自然となにかしらの影響を受けているはずです」 さらに自身の活動をどのように捉えているのかを聞くと、自身を何者かと規定することは避けたいと答える。 「私自身の制作は変わらずとも、見る人がそこにデザイン性やアート性を見出してくれる。私が自分という存在を何者かと決めるのはまだ先のこと。30年、40年と制作を続けたときにようやく制作活動がなんだったのかと振り返ることで、説明することができるようになるはずです。だから今はまだ自分を探している過程にある。私は大学でデザインを専攻しておらず、依頼を受けてデザインするものも自分の作品も境界はありません。企業とのコラボレーションには学ぶことも多く、自分の作品に違う形でフィードバックを与えることできるように思います」