<自動車>機能が形を生む「和デザイン」 階級社会の欧州とは真逆の手法
日本らしい自動車デザインとは何か。これまで日本メーカーがさまざまな手法で模索してきました。マツダは2010年にブランド戦略の一環として「魂動」という自動車デザインのテーマを発表。野生動物の躍動感に着想を得たこのコンセプトは、2012年発売のCX-5を皮切りに、同社ラインナップのデザインに導入されてきました。ここでは、モータージャーナリストの池田直渡氏が、マツダの魂動デザインへの取り組みを通して日本オリジナルのデザインについて探ります。
本質的な「和」の理解のやり直し
自動車における「和」デザインについて、マツダが長期的に取り組んで来たことを先週書いた。その過程で、欧州人がデザイン部門のトップに立ち、枯山水をモチーフとする文様で「和」を表したことに対する日本人デザイナーの抵抗は大きかった。そうした表層的な装飾ではなく、本質的なものの形で「和」を作り出して行きたいと考えたのである。 だから、デザイン部門の統括が日本人に変わった時、日本人による、日本人に納得できるより本質的な「和」を目指す流れができたのはある意味当然のことだ。そして マツダは「魂動」デザインに到達した。魂動デザインは、現在マツダの主要車種のデザインアイデンティティとして採用されている。それはほぼ全車に通底するものだとも言えるのだが、筆者はそこに至るまでの変化を一番端的に表しているのは、初代から現行までの3世代のアテンザだと思っている。 詳細は先週書いたが、初代アテンザは一言で言って欧州的デザインだ。二代目は、力強さを表現したフロントと、風や水の流れを取り入れて「和」を表すキャビン以降の造形で新しい形を模索しようとしたが、未消化に終わった。心意気は感じるが実力が足りなかったということだ。マツダは、その反省から日本の伝統工芸に学ぼうとしたのだ。「和」に対する理解のやり直しである。 普通に考えて道はあまりにも遠い。それは、表層の意匠に頼らない本質的な自動車の「和」がそれだけ難しいものだったということだろう。