初の書き下ろし小説を発売のふかわりょう「ロケの合間に出川哲朗さんに『ポスト出川は、おまえだ』と言われて、慌てて大きくかじを切りました(笑)」
――なるほど。 ふかわ やっぱり今の時代って"正しさ"を強いる風がものすごくあるじゃないですか。それがなかったらこの本は生まれてないですね。婚活とか恋愛市場における"いいひとの印象"っていうのが物語のスタート地点ではあるんですけど、きっとそれだけではこの一冊には到達できていなくて。 昨今吹き荒れている"時代の風向きによって生まれた渦"があったからこそ書けたものだと思うんです。 本の中でも少し触れてるんですけど、僕は「天才のB面に対して、社会はどう向き合っていくのか」ってところにすごく興味があって。まさに今、象徴的なことが起きてますよね。 「われわれは天才のA面を享受し、B面が気に入らなかったらそのレコードを破棄してしまうのか」っていうような、非常に大事な局面が訪れている気がします。この小説に正解が書いてあるわけではないんですけど、そういうことを考えるひとつのきっかけになってもらえればうれしいですね。 ●ふかわりょう1974年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学在学中の20歳でお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いへアターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。以降、テレビ、ラジオほか、DJや執筆など、その活動は多岐にわたる。近著に『スマホを置いて旅したら』(大和書房)、『ひとりで生きると決めたんだ』(新潮社)、『世の中と足並みがそろわない』(新潮文庫)、アイスランド旅行記『風とマシュマロの国』(幻戯書房)などがある ■『いいひと、辞めました』新潮社 1760円(税込)「いいひと」なのにモテない四十路の独身男・平田が、立派な「サイテー男」になる人生180度回転劇 取材・文/鈴木 旭 撮影/渡辺凌介