初の書き下ろし小説を発売のふかわりょう「ロケの合間に出川哲朗さんに『ポスト出川は、おまえだ』と言われて、慌てて大きくかじを切りました(笑)」
――出川さんの言葉がターニングポイントになったと。 ふかわ あと20代は自分の役割について考えることが多かったんですけど、30歳以降はどちらかというと全体を見渡すようになりました。周りが楽器に見えてきたんですよね。 「自分がどう鳴るか」じゃなくて、「周りの人をどう鳴らすか」。周りの音色を意識するようになった気がします。『5時に夢中!』のMCを始めるあたりは、もう明確に意識してましたね。 僕はずっとクラブDJをやってるんですけど、手綱を握る側の番組MCって、テンポとかリズムとか緩急とか、DJと重なるものがあるんです。そういうキャリアもいい作用を生んだのかもしれないです。 ■"正しさ"を強いる風がこの小説を生んだ ――タレント活動とは別に多くの著書を執筆されています。年齢で創作に対する向き合い方に変化はありますか? ふかわ 20歳の頃からは時間がたっているので、心の底にあるよどみというか原液のようなものの量や濃度は、より発酵して大変なことになってると思うんですけど(笑)。でも、ある意味、その原液は何十年も継ぎ足した秘伝のタレみたいにもなっていて。 時代とか世間の価値観みたいなものとの相性が良ければ僕もスッと飲み込めるんでしょうけど、うまく消化できないものだから、どんどんたまっていくんですよね。 その"消化できないもの"がいろんなことを表現するエネルギーになってるんだと思います。今回の場合は、以前から知る新潮社の編集者さんがスイッチを入れてくれて、今の時代に僕が消化できないものを小説として排泄した感じですね。 ――実際に書き始めてからはスルスルと出ましたか? ふかわ 割と快便でしたね(笑)。もちろん頭の中にあるものを言葉で構築するのは容易なことではないんですけど、出した今、僕の体内もすごく調子がいいというか。頭の中っていろんな情報が散らばってるじゃないですか。 悩みを書き出すと気持ちが整理されることってあると思うんですけど、小説ってその延長線にあると思うんです。頭の中にあることを、テーマにのっとって書いてるので。今回の本も「いいひと、辞めました」っていうひとつのキーワードがあって、その磁石に砂鉄がブワ~ッと集まってきたイメージです。